解決したい - 整理における交渉や訴訟トラブルQA 2024.10.21

共有持分の私道によくあるトラブル例と対処法を解説!売買時の注意点も紹介

道路には「公道」と「私道」の2つがあり、個人が所有する私道については通行を制限したり誰でも通れる様にしたり、その管理方法も自由です。

では、そんな私道が共有状態になっていたらどうでしょう。管理面においてトラブルが起きることもあり、その背景から共有関係から抜けたい方も多いはずです。

この記事では、そもそもの私道の定義から共有状態の私道の具体例、そしてよくあるトラブル例および対処法を紹介します。

そもそも私道とは

私道とは、個人や会社が所有する土地の一部に設置された通路上の土地を意味します。

たとえば、家を建てる際に所有する土地に作った道路や、工場内にある道路などが私道の代表例です。

なお私道は原則、土地所有者の許可を得なければ通行することはできません。通行に関する管理は所有者が行えますので、自由に通行して良いという状態にすることももちろん可能です。

公道との違い

そもそも公道とは、不特定の人や車が自由に通行できる道路です。道路交通法第2条第1項で規定されております。

結局のところ私道と公道の違いは、個人や法人が管理しているのか、国や自治体が管理しているのかという点です。

なお、自身の不動産に面する道路が私道かどうかを判断するには、主に下記3つの方法があります。

  • 法務局出張所で道路の登記簿謄本を取る
  • 管轄自治体の道路管理課で尋ねる
  • 不動産購入時の重要事項説明書

上記の方法で、私道か公道かを判断できます。

私道共有の具体例

共有状態の私道は、一般的に下記2つのどちらかに分類されます。

共同所有型私道

分譲地などでよくあるケースです。

該当する道路を囲む様に家が立ち並んでおり、その道路を共有で所有している状態です。

1つの指導が複数人の名義となっており、管理等は共有者同士の話し合いの元決定されることが一般的と言えるでしょう。

相互持合型私道

相互持合型私道とは、道路の土地を分筆して所有している状態です。

道路自体は1つですが、登記上では別々の土地を単独所有している形式となっており、厳密には共有状態ではありません。

ただ各所有者が道を通れるよう、通行権などは締結し、通れる様にしておくことが一般的です。

また相互持合型私道の場合では、契約書に制限などがなければ売却など所有者の意思決定のもと行えます。

共有持分の私道によくあるトラブル例

ここからは、共有持分の私道によくあるトラブル例を紹介します。

掘削工事を行えない

水道やガスなどのインフラ整備を行う際、掘削工事を行う必要が出てきます。そして掘削工事は「変更行為」に該当するため、共有者全員の承諾が必要です。

そのため1人が反対すれば掘削工事は行えず、トラブルに発展する可能性があります。

なお承諾する代わりに、法外な承諾料を請求されるケースも稀にあり、あまりにも高額すぎる場合は交渉や時には訴訟にまで発展してしまうことも考えられます。

通行承諾を得られない

私道を所有者が通るには、通行承諾を得る必要があります。

一般的に相互持合型私道があれば通行権などは締結し通れるようになりますが、承諾しないと相手が通れないという状況を利用し、高額な承諾料を請求されるケースが稀にあります。

こちらも交渉や、場合によっては訴訟に発展するトラブルリスクがあると言えるでしょう。

補修工事に協力してくれない

私道に損傷があり修繕が必要な場合でも、私道全体の修繕は「保存行為」に該当するため、持分割合の過半数の賛成が必要です。

そのため修繕の必要性をいち共有者が感じても、補修工事を実施できない、実施できたとしても費用を負担してくれないといったトラブルが起きる可能性があります。

この場合も、結局は共有者と話し合いを行いお互いの妥協案を見つけることが最適でしょう。

トラブルに発展しないよう、慎重に話を進めることも重要な要素です。

共有私道に関する税金を負担しない

私道も不動産ですので、固定資産税などの対象となります。

そして共同所有型私道の場合は、持分割合に応じて税金を負担する必要があります。しかし固定資産税は代表者1人に納税通知書が届くため、ほかの共有者が支払わずにトラブルになるケースがあります。

また代表者自身が払わない場合では、他の共有者に通知書が届くため、そこからトラブルに発展するケースも多いと言えるでしょう。

ただ以下のケースでは、そもそも固定資産税の対象にはなりません。

  • 通行のために使用されている
  • 不特定多数の利用に供されている
  • 所有者による使用制限が付いていない

というのも地方税法では、「公共の用に供する道路には固定資産税を課することができない」と定められており、所有する私道が該当する可能性があるためです。これは都市計画税においても同様です。

非課税になるかは自治体によって判断が分かれますので、不明な場合は詳細を問い合わせすることをおすすめします。

共有持分の私道に関するトラブル対処法

一般的には下記3つの方法で対処します。

話し合いを行う

まずは、当事者のみで話し合いを行えるなら行いましょう。

こちら側の要望と相手の要望を整理し、何が原因でトラブルに発展しているかを整理することをおすすめします。

整理した内容をもとに、妥協案がないか模索すると良いでしょう。

弁護士を通して話し合う

話し合いができない、話し合いをしてもまとまらなかった際は、弁護士を通して話し合うことも1つの手段です。

当事者同士のみだと、主張に偏りが出ることも多くきちんとした議論ができていない可能性も大いにあります。

弁護士を通して法律等の観点をもとに話し合いを進め、対処することもおすすめです。

訴訟を利用して解決する

話し合いでは平行線のまま、または通行承諾に関して高額な請求をされた場合は、訴訟により解決する方法もあります。

ただ、いきなり訴訟するのではなく、話し合いをしたが一向にまとまらずどうしようもない最終手段として利用するイメージです。

当然ですが費用もかかりますので、話し合い段階で対処することが望ましいと言えるでしょう。

私道に面する不動産を売買する際の注意点

私道に面する不動産を売買する際は、私道関連の権利が明確であるか把握しておきましょう。

代表的なものは下記です。

  • 私道を通行する権利
  • 私道を掘削工事する権利
  • 私道の共有持分の割合

特に通行権に関する承諾が取れているかどうかは重要です。

私道に面する不動産を売買する際に、売却の場合だと上記3点が明確になっていることが比較的売れやすくなります。また購入の場合だと、上記が明確になっているかは必ず確認しておくべきです。

そのため売却、購入のどちらかを行う際は、上記3点について改めて確認しておくべきでしょう。

まとめ

共有状態の私道は、一般的に下記2つのどちらかに分類されます。

  • 共同所有型私道
  • 相互持合型私道

どちらの形によるかで、起きうるトラブル例など対処法は変わってきますので、まずはどちらの共有状態であるかを確認すると良いでしょう。

またトラブルが起きた際は、お互いが不満なく解決できるよう妥協案も考えながら話し合いを進めることが重要です。

それでも話し合いがまとまらない場合は、弁護士などプロの力を借りて解決に動くことも選択肢の1つになります。