解決したい - 訳あり物件のローンの知識 2024.03.25

共有名義で住宅ローン控除を受けるメリットデメリットとは?計算方法も紹介

家を購入する際、住宅ローン控除を活用して節税に努める方も多いでしょう。

そして共有名義にすることで住宅ローン控除を2重で受けられるのは有名な話ですが、どれくらいの金額を、どれくらいの期間控除できるのでしょうか。

この記事では住宅ローン控除を共有名義により受けようとお考えの方に、基本的な情報と知っておくべき情報を紹介します。

そもそも住宅ローン控除とは

そもそも住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を購入した際に毎年一定額の控除を受けられる制度です。

なお控除を受けるには、以下を代表とする条件を満たす必要があります。

  • 床面積が50㎡以上
  • 居住用割合が2分の1以上
  • 自ら居住する住宅であること
  • 合計所得金額が2,000万円以下
  • 住宅ローンの返済期間が10年以上
  • 新築等の日から6か月以内に入居している

»参考:国税局「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

共有名義だと共有者分の控除を受けられる

控除を受けられる制度ですが、共有名義であれば共有者分だけ控除を受けられます。

基本的には夫と妻の2人が受けるパターンがほとんどですが、2人分の控除が受けられるため控除額がより多くなることが主なメリットです。

ちなみに共有者が3人以上いたとしても、上記に挙げた「自ら居住する住宅であること」といった条件を満たさなければ控除の対象にはなりません。共有者が多ければ多いほど良いという単純な話ではないため注意しておきましょう。

控除の上限は年間35万円

そんな控除を受けられる制度ですが、上限は年間35万円です。

そのため、仮に夫婦2人で控除を受ける場合は最大70万円の控除効果があります。

なお補足ですが、夫と妻がそれぞれ住宅ローン控除を受けられるのは「ペアローン」と「連帯債務」で借入を行った場合のみです。連帯保証は控除の対象外となりますので、その点も合わせて確認しておきましょう。

共有名義における住宅ローン控除の計算方法

ここからは、共有名義における住宅ローン控除の具体的な計算方法を紹介します。

計算方法は「借入残高×0.7%」

計算方法の詳細は下記のとおりです。

  • 年末時点での借入残高×0.7%

つまり年末時点の借入残高が3,000万であれば、21万円が控除額になります。夫と妻がそれぞれ3,000万ずつあるなら、42万が控除額になります。

なお2022年に行われた制度変更により、「1%→0.7%」に変更されています。Webでは過去の情報(1%による計算方法)がそのまま記載されているケースもありますが、現在は0.7%が正しい数値です。

また注意点が1つあります。上記で出した例は「持分割合が1:1」の場合の話でしたが、仮に持分割合を異なる数字に設定する場合は住宅ローンの割合も持分状況に合わせる必要があるため控除額が変わります。

「持分割合は7:3なのに、ローン負担額は5:5」のような状況だと贈与が行われているとみなされ贈与税が発生しますので注意しておきましょう。

住宅ローン控除の制度対象や借入限度額について

住宅ローン控除の制度対象など、詳細部分も確認しておきましょう。

下記は物件情報ごとの借入限度額についてです。

新築取得物件の控除額の限度額

2022〜2023年に入居2024〜2025年に入居
長期優良住宅・低炭素住宅5,000万円4,500万円
ZEH水準省エネ住宅4,500万円3,500万円
省エネ基準適合住宅4,000万円3,000万円
その他の住宅3,000万円2,000万円

既存物件の控除額の限度額

2022〜2025年に入居
長期優良住宅・低炭素住宅ZEH水準省エネ住宅省エネ基準適合住宅3,000万円
その他の住宅2,000万円

また控除期間については、下記のとおりです。

住宅の区分 居住の用に供した年 控除期間 各年の控除額の計算(控除限度額)
認定長期優良住宅認定低炭素住宅 令和4年・令和5年 13年 年末残高等×0.7%(35万円)
令和6年・令和7年 13年 年末残高等×0.7%(31.5万円)
特定エネルギー消費性能向上住宅 令和4年・令和5年 13年 年末残高等×0.7%(31.5万円)
令和6年・令和7年 13年 年末残高等×0.7%(24.5万円)
エネルギー消費性能向上住宅 令和4年・令和5年 13年 年末残高等×0.7%(28万円)
令和6年・令和7年 13年 年末残高等×0.7%(21万円)
一般の新築住宅 令和4年・令和5年 13年 年末残高等×0.7%(21万円)
令和6年・令和7年 10年 年末残高等×0.7%(14万円)

参考:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

上記の表に出てきた住宅情報の意味については、下記のとおりです。

長期優良住宅

長期にわたり良好な状態で使用するための措置講じられた優良な住宅

低炭素住宅

二酸化炭素(CO₂)の排出を抑えるための対策をとり、環境に配慮した住宅

ZEH水準省エネ住宅とは

断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を有する住宅

省エネ基準適合住宅とは

断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の住宅

自身の物件がどれに該当するかも、まずは確認しておくことをおすすめします。

なお、既存住宅(中古住宅)の控除期間は基本的に10年となっておりますので、こちらも合わせて認識しておきましょう。

控除を受けるには確定申告の必要あり

そもそも住宅ローン控除は、支払う所得税から引かれることで控除が行われます。そのため確定申告を入居した翌年に対象者それぞれが行う必要があります。

また控除については所得税からまず控除され、引ききれなかった分は住民税から控除されますが住民税からは最大で97,500円しか引かれないため、住宅ローン控除の額がすべて控除されない可能性もあります。この点は知っておきましょう。

なお2年目以降は、給与所得のみの会社員であれば年末調整で控除が行われます。

住宅ローンを共有名義にするメリット・デメリット

ここからは、そもそも共有名義で住宅ローンを組むメリットとデメリットを紹介します。

住宅ローンを共有名義にするメリット

メリットは下記の2点です。

住宅ローン控除を2重で受けられる

繰り返しですが、住宅ローンを2重で受けることができます。そのため1人でローンを組むより控除額が増える場合があります。

具体的に、5,000万を超える場合には共有名義で住宅ローンを組むメリットが出ます。というのも1人の場合は35万が限度ですが、それ以上の金額分が控除されるためです。

逆に言うと、全ての場合で「共有名義で住宅ローン=お得」というわけではありません。それぞれの物件情報と持分割合の設定などで状態は変わりますので、一度整理はしておきましょう。

借入額を増やせる

控除額の面ではありませんが、借入額を増やせるのもメリットの1つです。

1人だけでは借りれないローン額でも、夫婦など2人でそれぞれローンを組むことで、希望の高額物件を購入することが可能になります。

もちろん互いの収入状況にもよりますが、希望の不動産に手が届きそうでないなら共有名義による購入を検討する価値があるでしょう。

なお持分割合の設定は出資額の比率で決めます。妻が半分負担しているのに夫の単独名義となっていれば妻の負担分は「夫に贈与された」とみなされ贈与税が発生しますので注意が必要です。

住宅ローンを共有名義にするデメリット

デメリットは下記の2点です。

売却が面倒になる

共有名義のデメリットは、意思決定が1人では行えなくなることです。

たとえば夫が売却を希望しても妻がNOと言えば、売却はできません。

いわゆる所有物件(不動産)の管理が面倒になる点がデメリットであり、仮に離婚をすることになるとその物件をどう扱うかなど、話し合いが長期化し、最悪の場合は裁判になる事例もあります。

売却をはじめに、物件の管理にコミュニケーションコストがかかってしまうことがデメリットの1つです。

片方の収入がなくなった場合の返済が大変

たとえば夫婦で住宅ローンを組み、出産等で片方が仕事をやめる選択をしても、ローンの支払いは続きます。

また収入がないため所得税もなく、住宅ローン控除は受けられません。住宅ローン控除は対象者の所得税と住民税から引かれる仕組みのためです。

また仕事を続けている片方が肩代わりして支払いをすると、その分は「贈与」とみなされ贈与税が発生します。そのため当初は予定していなかった税金による支出が増える可能性もあります。

ただ年間で110万までの贈与であれば税金はかかりませんので、その点は覚えておくと良いでしょう。

どちらにせよ、長期的に収入が入るビジョンがなさそうなら、共有名義の住宅ローンは危険かもしれません。

控除額を最大限にするには持分割合を半分ずつに設定

控除額を最大にするなら、持分割合は半分ずつに設定することが最適です。

つまり住宅ローンを合わせた出資額を夫婦2人半々で負担する形です。

ただデメリットの部分でも説明したように、収入が途切れた場合は住宅ローン控除による控除はなくなり、片方が負担する必要が出てきます。

それにより単独名義への変更などを行う必要性も出てきますので、万人の方におすすめの方法だとは言い切れません。

メリットとデメリットの両方を把握して、メリット部分が大きそうなら活用するといった形で問題ないでしょう。

まとめ

住宅ローン控除の計算式は下記のとおりです。

  • 年末時点での借入残高×0.7%

年間最大35万の控除があり、夫婦2人なら最大70万の控除を受けられます。

金額面的には大きなメリットもありますが、共有名義であるがゆえのデメリットももちろんありますので、それぞれの特性を理解しておくことが重要です。

自身のライフスタイルに合わせ、最適な選択肢を取りましょう。