解決したい - 財産分与や相続税にまつわるトラブル 2024.03.25

小規模宅地の特例|共有名義の場合はどうなる?二世帯住宅の場合は?

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相続の際は相続税を支払う必要がありますが、支払いによりその後の生活が苦しくなるといったことが起こらないよう特例や控除が用意されています。

小規模宅地の特例も、そのうちの1つです。ただ共有名義の場合は、どのように適用されるのでしょうか。共有方法や相続対象によっては適用外のケースもあるため、その点の把握は必須です。

この記事では小規模宅地の特例詳細から共有状態における適用について紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

小規模宅地の特例とは

そもそも小規模宅地の特例とは、宅地等を相続した際に一定の要件を満たしていれば評価額の80%を減額できる制度です。

宅地等のうち一定の面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、下記の「減額される割合等」の表に掲げる区分ごとにそれぞれに掲げる割合を減額します。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

相続税は宅地等の評価額に基づいて決定されるので、つまり評価額の減額は支払う税金が少なくなることを意味します。

たとえば評価額5,000万の宅地等を相続した際、特例を利用することで80%(4,000万円)分を減額できるため、課税対象となる評価額は1,000万となります。

なお、基本的には以下の要件を満たしておく必要があります。

  • 被相続人等の事業用または居住用の宅地である
  • 建物または構造物の敷地として使用されている

たとえば別荘など居住用の宅地でない場合は、特例の対象外です。また小規模宅地の特例は4種類に細分化されていますので、その種類詳細も確認しておきましょう。

小規模宅地の特例の種類

特例については、以下4つに分類されます。

  • 特定居住用宅地等
  • 特定事業用宅地等
  • 貸付事業用宅地等
  • 特定同族会社事業用宅地等

それぞれ適用される限度面積と、減額割合が決まっています。

種類対象宅地限度面積減額割合
特定居住用宅地等被相続人等が居住していた宅地330㎡80%
特定事業用宅地等被相続人等が事業を行っていた宅地400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等被相続人等が経営する会社に貸していた宅地400㎡80%
貸付事業用宅地等被相続人等が賃貸事業等をしていた宅地200㎡50%

特定居住用宅地等

特定居住用宅地等は、被相続人が居住用に使用していた宅地等であり、要件に該当する親族が相続により取得したものを指します。

配偶者以外の場合は、相続税の申告前まで居住することかつ所有していなければ要件は満たされません。

特定事業用宅地等

特定事業用宅地等は、被相続人が事業に使っていた宅地等を指します。ただ事業の枠組みに貸付事業は含まれません。

なお特定事業用宅地等は、相続開始3年以上前に事業が開始されていた場合は適用されません。特定事業用宅地等は限度面積が特定居住用宅地等よりも高く、相続税軽減を目的として実施されることを防ぐためです。

また一定の規模以上の事業をおこなっていた場合はたとえ3年以内に事業が開始されていたとしても適用要件から外れるので注意が必要です。

貸付事業用宅地等

貸付事業用宅地等は、被相続人等が、不動産貸付業に使用していた土地を指します。賃貸アパートや第三者に貸していたりする場合が該当します。

こちらも、相続開始3年以上前に貸付事業が開始されていた場合は適用されません。

特定同族会社事業用宅地等

特定同族会社事業用宅地等は、一定の法人が事業に使用していた宅地等を指します。

なお被相続人が、法人が発行している株式の総数もしくは出資総額の50%超を保有している場合が前提です。また敷地の取得者が申告期限時点において役員の親族のみと限られていますので、この点は注意しておきましょう。

特例を用いた計算式について

一般的に、要件を満たしている場合は評価額の80%分を減額する形です。しかし以下の場合は計算方法が異なるため、紹介します。

  • 限度面積を超えている場合
  • 複数の特例を適用できる場合

限度面積を超えている場合

限度面積を超えている場合は、上限面積まで対象となります。具体例で見てみましょう。

  • 種類:特定居住用宅地等
  • 限度面積:330㎡
  • 土地面積:400㎡
  • 評価額:3,000万

3,000万×(330㎡/400㎡)×80%=1,980万

上記の場合、1,980万円分が評価額から引かれる形です。

複数の特例を適用できる場合

たとえば居住用宅地と事業用宅地が被る場合、併用が可能です。

そのため居住用宅地(限度面積330㎡)と事業用宅地(限度面積400㎡)を合わせ730㎡まで適用が可能となります。

ただ貸付事業用が含まれる場合は、適用面積が200㎡になるなど、複雑な計算方法となりますので、適用する土地が多い場合はご自身で判定をせずに、税理士に御相談されることを強く推奨いたします。

共有パターン別!小規模宅地の特例適用

ここからは、下記3つの共有パターン別の特例適用について紹介します。

生前に共有であった場合の適用

具体例で見てみましょう。

  • 宅地の面積:200㎡
  • 持分割合
    • 被相続人:1/2
    • 配偶者:1/2
  • 内容:被相続人の持分を相続

上記の場合、200㎡×1/2=100㎡分が特例の対象となります。

配偶者である場合は継続要件がありませんので、単純に考えることが可能です。

では下記の場合はどうでしょうか。

  • 宅地の面積:200㎡
  • 持分割合
    • 被相続人:1/2
    • 子供:1/2
  • 内容:被相続人の持分を相続

配偶者の場合は継続要件がありませんでしたが、子供の場合は相続税の申告期限まで居住を継続、かつ敷地を所有している必要があります。

上記を満たした時に、特例の適用が可能です。

相続により共有になる場合の適用

こちらも具体例で見てみましょう。

  • 宅地の面積:200㎡
  • 相続前の持分割合
    • 被相続人:単独
  • 相続後の持分割合
    • 配偶者:1/2
    • 子供:1/2

上記の場合、配偶者は200㎡×1/2分、特例の適用が可能です。

ただし子供は、居住をしていて継続要件を満たしていれば配偶者と同様に適用されますが、居住しておらず要件を満たしていない場合は特例の適用はされません。

二世帯住宅を共有していた場合の適用

二世帯住宅の場合は、登記の方法によって判断が変わります。

純粋に共有名義として登記していれば、相続者となる子供は小規模宅地の特例を適用できます。しかし区分所有登記であれば、同居要件を満たさないため、特例は適用できません。

そのため二世帯住宅である場合は、どのような形で登記を行っているかを確認しておく必要があります。

なお先を見越して生前に共有登記にかえることも1つの手段ですが、登記の手間がかかることはもちろん贈与税などが発生するケースもあるので、総合的に判断するようにしましょう。

共有名義における小規模宅地の特例に関する疑問

最後に、共有名義における小規模宅地の特例に関するよくある疑問2つを紹介します。

複数人で相続する場合の注意点は?

相続の状態によって、小規模宅地の特例が適用されないケースがあります。

たとえば相続人が、被相続人と同居していた子供Aと別居していた子供Bの場合、子供Aは継続要件を満たすため適用の対象となりますが、子供Bは適用の対象とはなりません。

したがって複数人で相続する場合は、要件を満たしているかどうかをまず確認する必要があります。

共有所有と分筆所有の違いは?

相続の際、たとえば兄弟で共有所有をするか分筆所有をするかを選択できます。

そして小規模宅地の特例を利用する際、状況にもよりますが相続の方法によって適用部分が変わります。

たとえば被相続人が所有していた土地に被相続人と兄が住む家、弟が単独で住む家があったとします。この土地を共有で相続する場合、小規模宅地の特例は兄のみ適用となるため、兄が相続する土地の2分の1が適用範囲です。

しかし分筆所有にする場合、被相続人の居住部分の土地を兄が相続することで、その土地全体が適用範囲となります。

なお分筆相続の場合は、土地家屋調査士による測量で分筆ラインを決めたり相続税の申告期限までに、遺産分割がされていることが条件です。必要な手続きを忘れないようにしておきましょう。

まとめ

あらためて、小規模宅地等の特例内容をまとめます。

種類対象宅地限度面積減額割合
特定居住用宅地等被相続人等が居住していた宅地330㎡80%
特定事業用宅地等被相続人等が事業を行っていた宅地400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等被相続人等が経営する会社に貸していた宅地400㎡80%
貸付事業用宅地等被相続人等が賃貸事業等をしていた宅地200㎡50%

基本的に評価額の80%が減額されますので、要件を満たしているなら活用すべき制度です。

また共有状態によって特例対象かどうかも変わるケースもありますので、自身がどのケースに当てはまるかまずは確認することをおすすめします。