売りたい - 売却にかかる税金と周辺知識 2024.03.25

共有名義物件を売却した時の3000万円控除の適用は?確定申告の流れも解説

不動産を売却する際に利益が出ると、その利益分に対して税金が発生します。

ただ「3000万円特別控除」を利用することで税金を抑えることが可能です。

そんな3000万円特別控除ですが、共有名義の物件を売却した際はどのように適用されるのでしょうか。3000万円特別控除の仕組みや要件はもちろん、共有名義における場合の注意点を紹介します。

3000万円特別控除とは

そもそも3000万円特別控除とは、個人が居住していた家屋を売却した際に発生した譲渡所得額から、最高3000万円が控除される特例です。

この3000万円特別控除により譲渡所得税が軽減されたり、そもそも発生しないメリットがあります。

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。

これを、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。

»参考:国税局「No.3302 マイホームを売ったときの特例

3000万円特別控除の要件

3000万円の特別控除を受けるには、以下の要件が満たされている必要があります。

  • 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること
  • 以前に住んでいた場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
  • 売った年の前年および前々年にこの特例またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
  • 売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
  • 売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
  • 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地に住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
  • 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。

出典:国税局「No.3302 マイホームを売ったときの特例

そもそもですが、自分が住んでいた家屋の売却にしか適用はされません。

そのため賃貸など不動産収益を上げているようなケースは適用外となりますので、注意しておきましょう。

また以前住んでおり、まだ売却してない場合は住まなくなった日から3年以内であれば適用されます。それ以降は3000万円の特別控除はできませんので、売却時期についても把握しておく必要があります。

譲渡所得税の計算方法

一度ここで、譲渡所得税の計算方法についても確認しておきましょう。

譲渡所得税は、下記の計算式で算出されます。

  • 譲渡所得税=課税譲渡所得×税率
  • 課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除
  • 譲渡所得 = 譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)
  • 譲渡収入金額:土地・建物の譲渡代金
  • 取得費:土地建物の購入代金と取得に要した費用を合計した金額から、建物の減価償却費を差し引いた金額
  • 譲渡費用:売るために直接かかった費用
  • 特別控除:3000万円特別控除等

上記の計算で、譲渡所得税が決まります。

譲渡収入金額と取得費に大きな差分がない限り、3000万円特別控除を活用することで税金は発生しないでしょう。

計算式を参考に、譲渡所得税が発生するかどうか確認しておくことをおすすめします。

共有名義の住居を売却した時の3000万円控除の適用について

ここからは、共有名義の住居を売却した際の3000万円控除の適用についてパターン別に紹介します。

建物と土地がそれぞれ共有の場合

建物と土地をそれぞれ夫婦で共有している場合、3000万控除は夫婦それぞれに適用されます。

つまり、最大6000万の控除を受けることが可能です。

建物が共有で土地が単独の場合

建物は夫婦共有だが、土地は夫と妻どちらかの単独名義である場合はどうでしょうか。

この場合でも、3000万控除は夫婦それぞれに適用されます。つまり、最大6000万の控除を受けることが可能です。

建物と土地がそれぞれ単独の場合

では建物は夫(妻)、土地は妻(夫)の単独名義である場合はどうでしょうか。

この場合は、夫婦合わせて最大3000万の控除しか受けることはできません。というのも3000万特別控除は「家屋の売却」を中心に考えられているためです。

ですので建物と土地がそれぞれ単独名義である場合は、一度専門家や税務署の方などに自分たちの場合はどのように適用されるか詳細を確認してみることをおすすめします。

3000万円特別控除の手続きと流れ

3000万円特別控除を受けるための手続きと、実際の流れを紹介します。

3000万円特別控除の適用には確定申告が必要

3000万の特別控除は、売却の翌年の2月16日~3月15日頃に確定申告することで適用されます。

たとえ控除の影響で税金が0になるからといって、確定申告をしなくていいわけではありません。勘違いする方も多いので、注意すべきポイントです。

確定申告に必要な書類

3000万特別控除に関する確定申告を行う際に必要な書類は、主に以下となります。

  • 譲渡所得の内訳書
  • 戸籍の附票の写しなど
  • 費用の領収書
  • 売買契約書コピー

譲渡所得の内訳書に関しては国税庁のホームページからダウンロード可能で、直近で確定申告を控えている方、どんな書類か見ておきたい方は下記リンクより参考にしてください。

»参考:国税庁 NATIONAL TAX AGENCY「確定申告書等作成コーナーよくある質問

3000万円特別控除と住宅ローン控除の併用について

有名な控除に、3000万円特別控除と住宅ローン控除があります。ただこれらの控除は、併用することはできません。

併用はできない

そもそも住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を購入した際に毎年一定額の控除を受けられる制度です。

そして3000万控除を利用すると、その前後2年間は住宅ローン控除を適用できません。つまり直近2年間で住宅ローン控除を受けていた方は、3000万控除の対象外ということです。

ここで考えるべき点は「どちらの方がお得なのか」という点です。

たとえば譲渡所得が2000万円だったとします。税率を約20%(長期譲渡所得)と仮定すると、税金は約400万円であり、3000万特別控除により約400万の節税効果があります。

では新しく物件を購入する際、年末のローン残高が3000万だった場合は初年度は残高×0.7%の約21万、最大13年間で、273万の節税効果があります。(実際は毎年のローン残高×0.7%のため、表記よりも少ない額になります。)

上記のケースでは、3000万控除の特例の方が税金面ではお得と言えるでしょう。しかし譲渡所得が200万なら、約40万の節税効果しかありません。この場合だと住宅ローン控除の方がお得と言えます。

つまり実際の譲渡所得や、2年以内に新しくローンを組むかどうかなどを考慮することで最適な手段が変わります。

一度情報を整理して、自身に合った制度の活用をすることが大切です。

まとめ

3000万円特別控除とは、個人が居住していた家屋を売却した際に発生した譲渡所得額から、最高3000万円が控除される特例です。

共有名義である場合は、共有者それぞれに3000万控除が適用されるため、夫婦2人なら最大6000万の控除が適用されます。

ただ注意すべき点は「家屋の売却」を中心に考えられていることであり、建物と土地で名義が違う場合はそれぞれ3000万の控除を受けられるわけではありません。

また3000万円特別控除を利用した前後2年間は住宅ローン控除を利用できませんので、どちらの特例が自身にとって最適かどうかもふまえて、活用することをおすすめします。