売りたい - 売却にかかる税金と周辺知識 2024.03.25
共有名義の不動産売却時の確定申告の書き方【税金計算方法も紹介】
共有名義の不動産を売却する上で、確定申告の存在は気になりますよね。
ただ、どういう場合に確定申告が必要なのか、どれくらいの金額を納める必要があるのかといった全体感を把握できていない場合も多いでしょう。
この記事では税金の計算方法から確定申告の流れなど、知っておかないとまずい点・得する点を紹介します。
この記事の目次
共有名義の不動産を売却した時に確定申告は必要?
そもそも、売却をしても必ず確定申告をしなければいけない、というわけではありません。
不動産売却により利益が出たかどうか、が主なポイントになります。
利益が出たら確定申告が必要
共有名義の不動産売却により、利益が出たら確定申告が必要となります。
利益=収入ですので、その収入分に税金がかかるイメージです。
また不動産売却における利益は「譲渡所得」と呼び、下記の計算式で算出されます。
- 譲渡所得=売却額ー(取得費用+譲渡費用)
詳細は後の税金計算方法の部分でお伝えしますが、上記の計算式より、利益が発生していれば確定申告により必要な税金を納めます。
なお不動産売却にかかる税金は、下記の2つです。
- 譲渡所得税
- 住民税
上記2種の税金が、確定申告により決定されます。
利益が出ていない場合は不必要
利益が発生していない場合、基本的には確定申告を行う必要はありません。
たとえば、売却額が取得費用よりも低い場合などが該当します。
ただ、特例を利用して他の所得と損益通算できる仕組みもありますので、特例利用による「控除・還付金」を受けようと考えている方は、確定申告をする必要があります。
どうすれば良いか分からない人は、まずは税理士など専門家に現状を相談してみるのが良いでしょう。
共有名義不動産売却における税金の計算方法
それでは、売却時の税金計算方法について紹介します。
税金の計算は、基本的に下記4つの流れを経て決定されます。
1.譲渡所得を求める
そもそも税金は「課税額×指定の税率」によって決まります。
ですのでまずは「課税額」を知る必要があり、不動産売却の場合は「譲渡所得」と呼びます。そして譲渡所得の求め方が下記です。
譲渡所得=売却額ー(取得費+譲渡費)
それぞれの詳細を説明します。
売却額(譲渡価額)
文字通り、売却した額です。
取得費
取得費とは、不動産の共有持分を取得するためにかかった費用で、(購入価格ー減価償却費)で算出されます。
購入価格は、下記などを足した費用です。
- 購入金額
- 不動産取得税
- 売買契約書の印紙代
- 不動産業者への仲介手数料
そして減価償却費は、下記の計算式で求めます。
建物購入代金×0.9×償却率×経過年数
このうちの償却率は建物によって変わっており、下記を参考にしてください。
建物の構造 | 耐用年数 | 償却率 |
---|---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 | 70年 | 0.015 |
れんが造、石造又はブロック造 | 57年 | 0.018 |
金属造(骨格材の肉厚4mm超) | 51年 | 0.020 |
金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 40年 | 0.025 |
金属造(骨格材の肉厚3mm以下) | 28年 | 0.036 |
木造又は合成樹脂造 | 33年 | 0.031 |
木骨モルタル造 | 30年 | 0.034 |
つまり木造のマイホームを3,000万で購入し、10年所有していたと考えると、減価償却費および取得費は下記になります。
- 減価償却費:3,000万×0.9×0.031×10=837万
- 取得費:3,000万ー837万=2,163万
譲渡費用
譲渡費用は、譲渡(売却)する際にかかった諸費用です。
不動産への仲介手数料などが該当します。
まとめますと、上記それぞれを計算して、下記の計算式より課税額(譲渡所得)を算出します。
- 譲渡所得=売却額ー(取得費+譲渡費)
2.持分割合で配分
全体の譲渡所得が求まれば、次は持分割合に応じて個人個人の譲渡所得を算出します。
たとえばAさんとBさんが50%ずつ持分を所有していた共有名義不動産があるとします。
そしてその不動産の譲渡所得が2,000万だった場合、AさんとBさんの譲渡所得は1,000万ずつになる形です。
あくまで個人個人は持分割合に応じた権利しか所有していませんので、譲渡所得もその割合に準じます。
3.特別控除を確認
個人の譲渡所得が求まれば、基本的には税率をかけて税金を算出します。
しかし特別控除によって、譲渡所得がさらに低くなるケースもあるので確認しておきましょう。
結論として、よくある特別控除は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」でしょう。
下記の条件を満たしていれば、譲渡所得から3,000万を引ける特例です。
- 実際に住んでいた家である
- 住まなくなって3年経過した年の年末までに売却する
- これらのどちらかに該当する家とその敷地を両方売る
»参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
たとえば譲渡所得が1,000万で、この特例を受けると課税対象となる利益は0円になります。
ただ注意点として、家屋ではなく土地のみを売却した際は適応外です。
3,000万円特別控除は、居住用建物にしか適用されない事実をきちんと把握しておきましょう。
4.税率をかける
特例による控除も考慮した上で、最後に税率をかけて税金を算出します。
なお繰り返しですが、不動産売却にかかる税金は下記の2つです。
- 譲渡所得税
- 住民税
そしてそれぞれの税率は、「所有年数」によって変わるため、ここは重要な観点です。
結論として、譲渡した年の1月1日現在で、その不動産の保有期間が「5年以下」であれば「短期譲渡所得」として高い税率が、「5年超え」であれば「長期譲渡所得」として低い税率が適用されます。
税率詳細は下記です。
短期 | 長期 | |
---|---|---|
譲渡所得税率 | 30% | 15% |
住民税率 | 9% | 5% |
上記のとおりで、所有年数によって税金が約2倍ほど変わります。
いわゆる不動産ころがしを行うメリットを少なくすることが目的なのですが、この観点は必ず把握しておきましょう。
状況によっては、売却する時期を考えた方が良い場合もあります。
共有名義不動産売却時の確定申告の書き方・流れ
ここからは、実際の確定申告の方法と流れについて紹介します。
譲渡所得税を計算する
まずは払うべき税金があるのか、先ほどの話を元に計算を行います。
- 税金算出の流れ
- 譲渡所得を求める
- 持分割合で配分
- 特別控除を確認
- 税率をかける
上記を参考に、まずは計算を行いましょう。なお算出がむずかしい場合は税理士など、専門の人に依頼するのも1つの手段です。
確定申告書類の用意と記載
確定申告を行う上で、主に下記の資料が必要となります。
- 確定申告書
- 譲渡所得の内訳書
- 源泉徴収票
- 売却した不動産の登記簿謄本
- 不動産売買契約書(写し)
- 不動産会社への仲介手数料の領収書(写し)
上記のうち、「確定申告書」と「譲渡所得の内訳書」は記載が必要なため詳細を説明します。
確定申告書の書き方
確定申告書では、主に下記の項目を記入します。
- 税務署名と日付
- 個人事業主の情報
- 収入金額等
- 所得金額
- 所得から差し引かれる金額
- 税金の計算
- その他・延納の届出
- 還付される税金の受取場所
記載項目について不明な部分などは、税務署などでも質問対応をしてもらえます。分からない部分は専門の方に相談するのが良いでしょう。
譲渡所得の内訳書の書き方
譲渡所得の内訳書では、下記の項目を記入します。
- 物件所在地
- 売買契約日
- 引き渡し日
- 買主の所在地と氏名(名称)
- 代金の受領状況
- 取得費
- 減価償却相当額
- 譲渡費用の計算結果
該当項目それぞれについて分からない部分がある場合は、専門の方に聞いてみるなどして記載を完了させましょう。
所轄の税務署に提出する
必要書類の収集と記載が完了したら、所轄の税務署に提出しましょう。
現在は、下記3つの方法で提出が可能です。
- 手渡し
- 郵送
- ネット提出(e-tax)
自分に適した提出方法で、手続きを完了させましょう。
共有名義の不動産売却の確定申告に関するよくある疑問
最後に、確定申告に関するよくある疑問をまとめます。
確定申告はそれぞれが行う?
確定申告は共有者それぞれが行います。
代表者1人が行うわけではありませんので、勘違いしないよう注意が必要です。
確定申告はどの期間に行う?
確定申告は共有持分を売却した年の、「翌年2月16日から3月15日」に行う必要があります。
また売却した年は「引き渡しが完了した年」となりますので、確定申告の時期がずれないよう確認はしておきましょう。
なお申告期間が過ぎてしまうと追徴課税として、より税金を払う必要が出てきます。その点も含めて注意が必要です。
確定申告は必ず行うべき?
利益(譲渡所得)が出ている場合は必ず必要です。
- 譲渡所得=売却額ー(取得費+譲渡費)
※特例の控除があれば、控除分も引く。
上記の計算式で譲渡所得が発生していれば、確定申告は必須です。
ただ譲渡所得がない場合は必ず行う必要はありません。とはいえこの部分は、税理士に相談してみるなど、分からない点があれば有識者に聞いておくことが理想です。
まとめ
税金の計算方法および確定申告の流れは、大まかにでも知っておくべきです。
それだけでも「分からない不安」を抱える必要がありませんし、無駄なストレスを減らすことにつながるでしょう。
なお分からない点に関しては税理士など専門の方に相談をして、状況を明確にしておくことをおすすめします。
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