
もっと知りたい - 訳あり物件の整理について 2024.10.21
共有名義から単独名義に変更する方法|費用やケース別の詳細を紹介
共有状態を解消したいといった点で、単独名義に変更を考える方は多いでしょう。
共有名義から単独名義に変更することは可能ですが、どのように変更するか方法は複数あります。また採用する方法によってかかる費用や税金なども変わりますので、概要と大まかな流れは把握しておくべきでしょう。
この記事では、共有名義から単独名義に変更する上で知らないと損する情報を紹介します。
この記事の目次
共有名義から単独名義に変更する方法
そもそも、共有名義から単独名義に変更する方法は、主に以下の3つとなります。
持分の売買
持分の売買により共有持分の所有者が1人になれば、単独名義となります。
たとえばAさんとBさんが50%ずつ持分を所有していたとして、話し合いによりどちらか片方に売却することになれば登記手続きを経て単独名義に変更されます。
なお売却額については、類似物件など相場を元に算出して決定します。その後に売買契約を締結して取引を完了する形です。
共有持分を手放したい、もしくは買い取って自身の不動産にしたい共有者がいる場合に利用される方法と言えるでしょう。どちらにせよ、共有者同士で話し合いを行うことが必須です。
持分の贈与
持分を贈与する、されることで単独名義にする方法です。売却とは違い「贈与」なので金銭のやり取りは発生しません。無償で持分を受け渡す形になります。
ただ「贈与税」が発生しますので、たとえば子供に無償で渡したいと思っても贈与税の負担が発生します。なお贈与税の税率は下記のとおりです。
基礎控除後の課税価格(一般税率) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超え | 55% | 400万円 |
一般税率
兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。
基礎控除後の課税価格(特殊税率) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
特殊税率
祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用します。(夫の父からの贈与等には使用できません)
»参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
なお贈与の際はトラブルを極力避けられるように、贈与契約書を作成しておき、口頭のみの約束は避けておきましょう。
持分の放棄
持分の放棄も、共有名義から単独名義にする方法の1つです。
そもそも放棄とは贈与とは少し違い、共有者の同意なく行えます。
そして放棄された持分は共有者の持分割合に応じて分配され、仮に2人のみで共有していた場合は単独名義になります。
ただ放棄とはいえ、持分を得た人は「贈与された」と税務上は認識されますので贈与税が発生します。また放棄後の登記申請は共有者全員で行う必要があるため、同意なく放棄の選択はできますが共有者の協力がなければ基本的には登記面の処理が完了しません。
ですので、事前に共有者と話し合いを行うのは必須と言えるでしょう。
共有名義から単独名義に変更するケース別詳細
実際に共有名義から単独名義に変更する場合の、ケース別の詳細を3つ紹介します。
夫婦による共有名義を単独名義へ
夫婦で共有名義の不動産を抱えており単独名義にしたい場合、その原因は離婚のケースが多いでしょう。
そして離婚による「財産分与」により単独名義に変える場合は、贈与税など税金の負担なく手続きすることが一般的に可能です。
ただローンが残っている場合はローンの名義変更を行う必要があるので、共有をはずれる名義人がローンの残債を一括返済するなどの対応が必要となります。
なお離婚などではなく、夫と妻どちらかの単独名義にしたい場合は「夫から妻への贈与」といった形で贈与などによる名義変更が可能です。
親子による共有名義を単独名義へ
親子で二世帯住宅を購入したり、子のマイホーム購入に資金援助したことなどを背景に共有名義になっている場合は「贈与」や「売却」による対応で単独名義に変更します。
相続の際に共有関係がより複雑になる事を避けて、名義変更をしておくことは賢明でしょう。この辺りは親族間の状態なども加味して最適な手段を取る事をおすすめします。
相続による共有名義を単独名義へ
相続による単独名義の変更は、相続状態によります。
たとえば相続人が自身のみなら、相続登記の申請を行う事で単独名義となります。しかし複数人いる場合は、遺産分割協議により単独名義にする形です。
ただ遺産分割協議では、遺産分割協議書に対象者全員からの捺印が必要ですので必ずしも単独名義にできるとは限りません。とはいえ、遺言書に単独名義に関する相続の旨が書かれている場合は遺産分割協議をせずとも単独名義となるため、まずは状況把握が必須です。
共有名義から単独名義に変更する際の費用・税金
ここからは、共有名義から単独名義に変更する際にかかる費用および税金について紹介します。
登録免許税
名義を変更する際は「登録免許税」という税金が発生します。税率に関する詳細は下記のとおりです。
土地の所有権の移転登記
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率(措法72) |
---|---|---|---|
売買 | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 令和5年3月31日までの間に登記を受ける場合1,000分の15 |
相続、法人の合併または共有物の分割 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | - |
その他(贈与・交換・収用・競売等) | 不動産の価額 | 1,000分の20 | - |
建物の登記
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率(措法72の2~措法75) |
所有権の保存 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | 個人が、住宅用家屋を新築または取得し自己の居住の用に供した場合については「(3)住宅用家屋の軽減税率」を参照してください。 |
売買または競売による所有権の移転 | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 同上 |
相続または法人の合併による所有権の移転 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | - |
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等) | 不動産の価額 | 1,000分の20 | - |
»参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
譲渡所得税
自身が売却した際は、利益が生じた時のみ「譲渡所得税」が発生します。基本的な計算式は以下の通りです。
- (売却額-取得費用-売却費用)×税率
なお税率部分は、不動産の所有年数によって変わります。
- 5年未満:30%
- 5年以上:15%
»参考:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
所有年数によって税率が大きく変わったり、3,000万円の控除を受けることができる可能性もありますので、売却を考えているなら時期も合わせて事前に税理士に相談しておくと良いでしょう。
司法書士依頼報酬
移転登記をはじめに、登記関連の申請作業を司法書士に依頼する場合には報酬額が必要となります。
費用は事務所によって変わりますが、一般的には5万円〜10万円ほどです。
自分で行うことも可能ですが、専門領域であるため依頼するケースが多いため事前に学んでおく必要はあるでしょう。
なお、共有持分の場合は共有者ごとに申請が必要なため金額×人数分が必要です。この点はあらかじめ認識しておきましょう。
印紙税
売買および贈与契約書を作成する際は「印紙税」が発生します。印紙税は売買金額によって変動し、その詳細が下記です。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
»参考:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
ちなみに贈与契約書の場合は「一律200円」となっております。
共有名義から単独名義に変更する手順
共有名義から単独名義に変更する手順を紹介します。基本的に以下3つの流れです。
司法書士に依頼
まずは現状を整理して、司法書士に依頼しましょう。
必ずしも依頼する必要はありませんが、間違えがあれば再申請が必要であったり余計に税金を払うリスクもありますので、依頼することが一般的と言えます。
必要書類を準備
基本的には以下の書類が必要です。
- 申請者の住民票
- 申請者の印鑑登録証明書
- 不動産の登記識別情報
ここに、相続であれば「遺産分割協議書」であったり、売買であれば「売買契約書のコピー」が必要で、登記に関する必要書類が変わってきます。
この辺りの整理も含めて司法書士が行ってくれますので、周辺知識がない方は依頼した方が良いでしょう。
法務局にて登記申請
必要書類がそろえば、法務局にて登記申請を行います。
あとは法務局側が手続きを行い、完了次第「登記完了証」が交付されます。この時点で、名義変更の完了です。
共有名義の変更に関するよくある疑問
最後に、共有名義の変更に関するよくある疑問を紹介します。
共有者が死亡した場合の名義変更は?
共有者が死亡した場合、遺言書があればそれに従い相続され名義変更等の手続きを行います。
ただ遺言執行者が選任されていない場合は遺言執行者の選任申し立てという作業を行い、登記申請などの流れに移ります。
また、そもそも遺言書がなければ「相続財産管理人」の選任申し立てが必要です。この作業を行い、同様に登記申請などの流れに移る形です。
単独名義から共有名義に変更する方法は?
単独名義から共有名義に変更する方法は、結局のところ「売買」か「贈与」を行い、その内容を登記申請する形です。
決して登記申請だけでは共有名義にはできませんので、その点は注意しておきましょう。
まとめ
共有名義から単独名義に変更する方法はいくつかありますが、どれも税金など諸費用が発生します。
自身に該当する方法の詳細を把握しておくことで無駄な失敗も減らせますので、専門の方に話を聞いてみるなど情報収集を行うことをおすすめします。
なお共有関係を解消したいだけなら、自身の持分売却による方法もあります。自身の単独名義にする事は不可能ですが、現金化をして共有関係から抜けたいと考えているなら、持分売却もおすすめの方法です。
共有持分の売却に関しては専門の買取業者がいますので、そういった方々に依頼してみましょう。弊社も共有持分の買取に注力しており、弁護士や税理士と連携して依頼者様にとってより良い選択になるよう努めております。
売却についても気になる方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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