もっと知りたい - 訳あり物件の整理について 2024.03.25
持分移転登記とは?かかる費用・税金・申請の流れを徹底紹介
共有持分の売買や相続を行う際、「持分移転登記」は必須になります。
持分移転登記は一言で説明すると「共有持分者の名義変更」です。この処理を行わないと後に権利関係や税金面でトラブルが起きるため、早めに対応する必要があります。
この記事では持分移転登記が必要なケースやかかる費用、具体的な手続きの流れを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
持分移転登記とは
そもそも持分移転登記とは、共有持分の名義変更手続きです。
共有持分の売買や相続などで持ち主が変わる際に、AさんからBさんに名義が変更されましたという登記を法務局に申請します。
この登記により正式に権利を主張できたり不動産の管理面に介入できるため、共有持分を何かしらで入手もしくは手放す時には必須の手続きです。
持分移転登記が必要な具体的なケース
ではここから、持分移転登記が必要な具体的なケースを5つ紹介します。
共有持分の売買
共有持分の売買が発生した時は、持分移転登記を行う必要があります。
売買が発生する時は、基本的に持分の所有者が変わるため名義変更を行う必要性が出てきます。たとえば下記の状況で考えてみましょう。
売買前
- Aさん:1/2 →Cさんに売却
- Bさん:1/2
↓
売買後
- Aさん:持分なし
- Bさん:1/2
- Cさん:1/2
CさんがAさんの共有持分をすべて購入した場合、「AさんからCさんに名義が変わった」という登記を行う必要があるわけです。
共有持分の相続
相続でも、持分移転登記を行う必要があります。
たとえば、下記の状態で考えてみましょう。
- 夫:1/2
- 妻:1/2
- 子:持分なし
↓ 夫が死亡した場合
- 夫:持分なし
- 妻:3/4
- 子:1/4
上記の例は「法定相続分」に基づいて持分割合の比率を設定いたしました。
相続された内容で、その事実を持分移転登記によって公式に証明しておく必要がある形です。
離婚による財産分与
離婚によって財産分与が行われた際も、持分移転登記が必要になる場合があります。そもそも財産分与とは、下記のような制度です。
離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度です。
財産分与は,(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配,(2)離婚後の生活保障,(3)離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質があると解されており,特に(1)が基本であると考えられています。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00018.html
必ずしも持分移転をする必要はありませんが、離婚という形で関係を解消する場合、不動産の持分を共有している状態はトラブルの種にもなりかねます。余計なトラブルを避けるためにも、持分移転登記で共有状態も解消しておくのが一般的な形です。
たとえば「夫:1/2|妻:1/2」で持分を所有しており、妻が住み続ける形となれば「夫:持分なし|妻:1/1」に変更を行い、共有関係を解消するのが一般的と言えるでしょう。
共有持分の放棄・贈与
共有持分を放棄もしくは贈与する際も、持分移転登記が必要となります。
なお、放棄と贈与による持分の移動の違いは下記のとおりです。
- 放棄:ほかの共有者に割り振られる
- 贈与:特定の人に持分が渡される
共有者がAさん、Bさん、Cさんの3人とします。
- Aさんが放棄:BさんとCさんに割り振られる
- AさんがBさんに贈与:Bさんのみ持分が増える
上記のように持分が移動します。
なお、申請は関係者が共同で行う必要がありますので、スムーズに連携できるようこまめに連絡を取っておくと良いでしょう。
共有物分割による代償分割
共有物分割の代償分割を行う時も、持分移転登記が必要です。
そもそも代償分割とは共有物分割の1つであり、他の共有者の持分を買い取ることで共有関係を解消する方法となります。
ほかに「現物分割」と「換価分割」がありますが、それぞれ土地を分筆する、売却してお金を分割するという方法のため、共有持分はそもそも関係ありません。
持分移転登記にかかる費用について
ここからは、持分移転登記にかかる費用について見ていきましょう。
持分移転登記をする上では、主に以下3つの費用がかかります。
登録免許税
登録免許税とは、不動産の登記にかかる税金です。基本的には取得をした人が支払う費用になります。
なお、登録免許税の計算方法は下記になります。
- 登録免許税額 = (課税標準)×(税率)
税率面をわかりやすくまとめたものが、下記です。
売買 | 土地 | 平成31年4月1日から令和5年3月31日まで:1000分の15令和3年4月1日から:1000分の20 |
---|---|---|
売買 | 土地以外の不動産 | 1000分の20 |
相続 | すべて | 1000分の4 |
贈与 | すべて | 1000分の20 |
財産分与(離婚) | すべて | 1000分の20 |
たとえば、5,000万の不動産の50%(1/2)の共有持分を贈与する場合、登録免許税は下記になります。
- 5,000万×1/2×20/1000=50万
上記のように計算を行い、支払う必要があります。
共有持分を取得した人においては取得後に取得税も発生するのでご留意ください。
司法書士報酬
司法書士報酬とは、手続きを司法書士に任せた場合にかかる費用です。
司法書士に依頼するかは任意ですが、登記処理が面倒だと感じる場合は依頼しても良いでしょう。
その他の費用
その他の費用として、下記があります。
- 住民票:300円ほど
- 印鑑登録証明書:450円ほど
- 固定資産税評価証明書:300円ほど
上記はそれぞれ、手続きを進める上で必要となる書類です。
持分移転登記の流れ
それではここから、持分移転登記の流れも確認していきましょう。
1.必要書類の準備
- 登記申請書
- 住民票
- 登記済票
- 印鑑証明書
- 登記原因資料
- 固定資産評価証明書
特に登記申請書には、主に下記の項目を記入します。
- 登記の目的
- 原因
- 当事者
- 添付情報
- 登記識別情報を提供することができない理由
- 登記識別情報の通知
- 申請日と法務局
- 課税価格
- 登録免許税
- 不動産の表示
上記を記載する必要があるため、司法書士に依頼する方も多いと言えます。
2.法務局に書類提出
必要書類が準備できたら、法務局に提出します。
なお提出方法は3種類あります。
- 法務局の窓口で渡す
- 法務局に郵送する
- インターネットで申請する
こちらについては、自身に合った方法で問題ありません。
3.移転登記完了の書類を受け取り終了
およそ1週間〜2週間で、移転登記が完了した旨を表す書類が届きます。
この時点で登記は完了です。ただ修正項目などがあれば対応が必要なため、追加で時間を要します。
持分移転登記に関するよくある疑問
最後に、持分移転登記に関するよくある疑問を4つ紹介します。
移転登記に関係する税金は?
移転登記の際、主に以下4つの税金が関係します。
- 相続税
- 贈与税
- 譲渡所得税
- 不動産取得税
相続税
相続の際にかかる税金で、計算方法と税率は下記のとおりです。
- 相続税=取得金額×税率-控除額
取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
贈与税
贈与の際に発生する税金で、計算方法と税率は下記のとおりです。
- 贈与税=課税額×税率-控除額
基礎控除後の課税価格(一般税率) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
基礎控除後の課税価格(特殊税率) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円超 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
譲渡所得税
持分売却により得た利益にかかる税金で、譲渡所得は下記の計算式で求めます。
- 譲渡所得=売却価格-(譲渡費用+取得費用)
そして上記の譲渡所得に、下記の税率で計算されます。
区分 | テキスト | テキスト |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
なお売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、5年以下の場合は「短期譲渡所得」の分類で計算を行います。
不動産取得税
相続以外の売買や贈与等の際に発生する税金で、固定資産税評価額の4%です。
というわけで関わる税金の種類は複数ありますので、持分売却の際は税金関連も含めて専門家に相談しておくことが無難でしょう。
自分1人で移転登記処理はできる?
自分1人でも可能です。
ただ手続きが面倒だと感じる方や不安を感じる方は、司法書士事務所にお願いするのが良いでしょう。
その一方で、費用を抑えたい方や、その道の知識がそれなりにある方は自分で行っても問題ありません。
法務局に問い合わせることで詳細を聞ける場合もありますので、うまく活用するのも良いですね。
持分の一部だけを移転することはできる?
贈与や売買という形で移転ができます。
移転登記はそもそも誰が行うべき?
基本的には、もとの所有者と新しい所有者の双方で行います。
そのため双方で、しっかりとコミュニケーションを取ることが大切です。
なお相続などの事情がある場合は、単独による申請が認められています。
まとめ
持分移転登記は、今後共有関係でトラブルが起きないよう早めに対応しておく必要があります。
なお、持分移転登記が必要となるタイミングは主に下記の場合です。
- 持分移転登記が必要なケース
- 共有持分の売買
- 共有持分の相続
- 離婚による財産分与
- 共有持分の放棄・贈与
- 共有物分割による代償分割
権利関係はきちんとした手続きをしておかないと、その効力が発揮されない可能性もあります。
面倒なトラブルが起きないよう、手続きを早めに進めておくのが賢明でしょう。また共有持分はトラブルの種でもあるため、共有持分に関する知識も身につけておくことをおすすめします。
条件でさがす
カテゴリ別にみる
- はじめて
- もっと知りたい
- 売りたい
- 解決したい