
もっと知りたい - 権利関係の法律基礎知識 2024.03.25
夫名義の家だと妻の権利はどうなる?【離婚時・死亡時ごとに解説】
夫名義の家に居住する上で、夫と離婚したり死別してしまった場合に妻の権利はどうなるのでしょうか。
名義人が夫である以上、理不尽な要求でも受け入れる必要があるのか、または妻側にも主張できる権利があるのか紹介します。
また死別してしまった場合の権利問題や名義変更についても、詳しく紹介します。
前提:夫名義の家でも妻の権利は守られる
結論から言うと、夫名義の家でも妻の権利は守られます。
離婚した場合でも財産分与により、夫婦期間で築いた財産は均等に割り振られます。また死別した場合も、配偶者居住権という権利の元、たとえ夫名義の家でも居住は可能です。
ただ離婚と死別でそれぞれ注意すべき点が変わるため、それぞれの詳細を分けて説明します。
夫名義の家に関する妻の権利:離婚の場合
まずは離婚してしまった場合の、夫名義の家に関する妻の権利についてです。
離婚時の権利について
夫名義の家に関する妻の権利に話を絞ると、結婚してから購入した家の場合は財産分与により妻にも所有する権利があります。
そもそも財産分与とは、夫婦で築き上げた資産を離婚時に分配する制度です。法務省も下記のように言及しています。
Q1 財産分与とはどのような制度ですか
(A)
離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度です。
財産分与は,(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配,(2)離婚後の生活保障,(3)離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質があると解されており,特に(1)が基本であると考えられています。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00018.html
そのため「自分(夫)名義の家だから出ていけ!」と言われても、正当に主張できる権利は一般的にはあります。
ただ注意点があります。あくまで財産分与は「夫婦で築き上げた資産」が対象のため、婚姻前に夫が購入していた家に住んでいる場合は、不動産に関連する部分で主張はしづらいでしょう。
一度話をまとめると、財産分与をする場合は下記どれかの対応となります。
- 夫婦がどちらも家に住まないなら売却して分配
- 夫のみ住む場合は妻に代償金を支払う
- 妻のみ住む場合は夫に代償金を支払う
たとえば2,000万円の価値がある家に居住していた場合、夫婦どちらかが出ていく場合は出ていく人に1,000万円を代償金として支払う必要があります。
しかし代償金を支払えないという場合も多いでしょう。その場合に「共有名義」にして代償金の支払いを避ける場合もありますが、これはおすすめできません。
というのも共有名義にすると、不動産の売却を含めた管理面で共有者の同意が必要となりトラブルの種を残すことにつながるためです。
共有名義にする場合は、一度メリットデメリットの両者を確認することをおすすめします。
離婚時の名義変更について
名義変更については、妻が夫名義の家に住む場合は行った方が良いです。
というのも、夫が住宅ローンを滞納した際に不動産が競売にかけられたり、連絡をとりたくない夫と連絡を取りを続ける必要があるためです。
なお名義変更を行うタイミングですが、名義変更には下記4つの税金が発生することがあります。
- 贈与税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
- 不動産取得税
しかし離婚で家を財産分与するとなれば、贈与税と譲渡所得税は非課税となります。
そのため、正式に離婚したあとに名義変更を行った方が良いと言えます。
タイミングについては、上記の考えを元に実施した方が良いでしょう。
夫名義の家に関する妻の権利:死別の場合
つづいて死別してしまった場合の、夫名義の家に関する妻の権利についてです。
死別時の権利について
死別してしまった場合ですが、配偶者居住権という権利を行使することで居住を継続することができます。
配偶者居住権とは,夫婦の一方が亡くなった場合に,残された配偶者が, 亡くなった人が所有していた建物に,亡くなるまで又は一定の期間,無償で 居住することができる権利です。
https://houmukyoku.moj.go.jp/maebashi/page000001_00235.pdf
夫がなくなれば相続が発生するため、家を売却して金銭を分配する必要もありましたが、2020年4月に施行されたこの制度により、居住を続けることが可能となりました。
ただ注意点が2つあります。
1つ目は、別居していた配偶者には認められない点です。相続が発生したタイミング(死亡時)に同居していた場合のみに認められます。
2つ目は、他人には委譲できない点です。この権利は、配偶者しか適用されません。
死別時の名義変更について
死別時は相続が発生するため名義変更が必要となりますが、生前に名義変更をする場合と亡くなられた後に名義変更する場合では発生する税金が異なります。
具体例として、生前だと贈与税などが発生しますが、亡くなられた後だと相続税が発生します。一概にどちらが税金を抑えられるかは言い切れず、この点については専門家に現状を相談してみるのが1番の解決策だと言えます。
夫名義の家における妻の権利に関するよくある疑問
夫名義の家における妻の権利に関するよくある疑問について解説します。
出ていけと言われたらどうすれば良い?
そもそも正式に離婚をしていないなら、婚姻関係は継続しており妻にも占有権限がある状態です。
また婚姻関係の時に購入した家であるなら、財産分与の際に妻も財産を保有できる権利があるため、家を出ていく必要はありません。
ただ、あくまで権利の話のため家をどのように活用していくかは2人で話し合う必要があります。
離婚時の財産分与の適切な考え方とは?
財産分与とは、夫婦が築き上げた財産を離婚時に分配する制度です。
そのため名義人(誰がお金を出したか)は、基本的には変わりません。一般的には財産を均等に分ける形となっており、不動産や預金など、夫婦の期間で築き上げた財産を分配するという理解で問題ありません。
夫が死んだ場合の適切な相続方法は?
夫が死んだ場合は、基本的に妻の単独名義として相続するのが良いと言えるでしょう。
相続の関係上、子供や夫の親、親戚が相続対象となる可能性がありますが、共有名義で相続すると後にトラブルになる可能性が非常に高いです。
そのため不動産に関する遺産は妻が受け、残りの現金などの資産は子供が受け取り法定相続分に従った割合に相続できるよう動くのが良いと言えます。
この点は相続対象者と話し合いが必須なので、話し合いの中で共有名義は避けたい意向を伝えるようにしましょう。
まとめ
再度まとめると、夫名義の家でも妻の権利は守られます。
離婚した場合でも財産分与により、夫婦期間で築いた財産は均等に割り振られます。また死別した場合も、配偶者居住権という権利の元、たとえ夫名義の家でも居住は可能です。
状況により対応は変わりますが、離婚時も相続時も共有名義にする選択肢が出てくる場合もあるでしょう。
しかし共有名義はトラブルの種と言われるほどで、安易に選択するのは危険です。メリットやデメリットも把握した上で検討することをおすすめします。
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