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もっと知りたい - 権利関係の法律基礎知識 2024.03.25
配偶者居住権と共有名義の関係|要件やデメリットも全て解説!
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配偶者居住権とは、亡くなった人の配偶者が被相続人の住居にそのまま居住し続けることができる権利です。
相続の観点で、居住するための家を売却しなくても良い、老後資金を確保できるといったメリットがありますが、共有名義の家の場合はどうなるでしょうか。
そもそもの配偶者居住権の詳細から、共有名義物件である場合の注意点など知っておかないとまずい情報を紹介します。
配偶者居住権とは
そもそも配偶者居住権とは、配偶者のどちらか一方が亡くなった場合に、残された配偶者が一緒に住んでいた家に亡くなるまで居住し続けることを認めた権利です。
2020年の4月施行の改正民法で、認められるようになりました。
この背景には、遺産分割により配偶者が困窮した状態に陥ってしまうことがあります。
たとえば以下の状況があったとしましょう。
- 相続遺産:4,000万
内訳
- 家:3,000万
- 現金:1,000万
上記の場合、配偶者は法定相続分に従い50%、子供も50%を受け取ります。そして配偶者は家に居住するために持ち家を取得した場合、子供は2,000万分を受け取る権利があるため、配偶者に実際にある1,000万と別に1,000万を請求できます。
すると配偶者の方は現金を1,000万用意する必要があるため、老後資金を切り崩したり、持ち家を売却して資金を作る必要があり、結果的に生活が苦しくなる事例が発生していました。
そこで配偶者居住権を利用することで、たとえば子供が家を取得しても配偶者はその家に居住し続ける権利を得ることができます。下記の図も参考にしてみましょう。
![](https://8080stn.co.jp/wp-content/uploads/f330ba78a8366cc156406c14c6e370c7.png)
出典:法務局「配偶者居住権とは」
このようにして「住む場所」と「生活費」を確保できるような仕組みを作るため、配偶者居住権が施行されました。
なお配偶者居住権に似た言葉に、「配偶者短期居住権」という権利もあります。それぞれの概要も見ておきましょう。
配偶者居住権の概要
配偶者居住権は先ほども説明した通り、残された配偶者が居住し続けられる権利です。
ただ亡くなった人の遺言か共同相続人の同意が必要であり、自動的に付与されるものではありません。そこで次に紹介する配偶者短期居住権があります。
配偶者短期居住権の概要
配偶者短期居住権は、亡くなった人の遺言か共同相続人の同意は必要ありません。
しかし文字通り短期であり、原則として相続開始から6か月間もしくは建物の遺産分割が確定するまでの期間のみ効力を発揮します。
それまでに配偶者居住権の話をまとめたり、同意が得られない場合は新しく居住する場所を見つける必要があります。そういった時間を設けるための6ヶ月でもあります。
配偶者居住権の成立要件
配偶者居住権と配偶者短期居住権それぞれの成立要件を紹介します。
配偶者居住権の成立要件
成立要件は、下記です。
- 残された配偶者が亡くなった人の法律上の配偶者であること
- 配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に亡くなったときに居住していたこと
- ①遺産分割②遺贈③死因贈与④家庭裁判所の審判のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと
ただ、対象の建物に配偶者以外で共有者が存在する場合は配偶者居住権は認められません。
というのも配偶者の方が亡くなるまで居住し続けられる権利は、他の共有者の権利を大きく妨げていると考えられるためです。
配偶者短期居住権の成立要件
配偶者短期居住権の成立要件は、下記です。
所有者が亡くなった時点で、対象の建物に配偶者が無償で居住している
繰り返しですが、配偶者短期居住権は共同相続人の同意などは必要なく与えられます。ただ被相続人に賃料を払っていたなどの背景があれば、認められません。
共有状態における配偶者居住権
ここからは、共有状態における配偶者居住権の詳細について、下記2つのケース別に紹介します。
夫婦で共有していた場合
夫婦で共有していた場合は、配偶者居住権は有効です。
被相続人の生前時、その物件に夫婦以外で所有権を保持していた人はいないためです。
親子で共有していた場合
子供が持分を保持している場合、配偶者居住権の取得はできません。
持分を取得しているということはその物件の所有権を有しているわけでもあり、該当共有者の権利を妨げていると判断されるためです。
なお子供ではなく、第三者の共有者がいても話は同じです。この場合はまず「配偶者短期居住権」により時間を確保してその間に配偶者居住権以外の方法を検討する必要があります。
配偶者居住権に関して知っておくべき点
ここからは配偶者居住権に関して知っておくべき点を3つ紹介します。
譲渡・売却はできない
配偶者居住権自体の譲渡や売却はできません。あくまで「居住権のみ」を保有しており、売却などは所有権を保有する方が意思決定できる形です。
どうしても売却や譲渡をしたい場合は居住者が配偶者居住権を放棄し、その上で所有権を持つ人が売却の手続きを行う流れとなります。
改築・賃貸は所有者の同意が必要
物件の構造に影響のある改築や増築、第三者への貸し出しにも所有者の同意が必要です。
民法第1032条の3より、居住者のみの判断では上記の行為は行えないことが定められていますので、この点も把握しておく必要があります。
配偶者居住権の登記は行っておくべき
配偶者居住権の登記は、必ず行っておきましょう。
というのも所有者が変わった際に、その権利を正式に主張できない可能性があるためです。
所有者が変わるというのは、たとえば子供が所有者であった場合に、子供が第三者へ売却することを指します。この際に配偶者居住権の登記がないと、配偶者居住権を主張して住み続けることがむずかしくなる可能性があります。
こういった背景から、登記作業は必ず行っておきましょう。
配偶者居住権のメリット
配偶者居住権のメリットを3つ紹介します。
今まで通り居住できる
やはり最大のメリットは、今まで通り居住を続けられることです。
また当然ですが無償のため、賃貸のように費用が発生する不安もありません。
老後の生活資金を確保できる
下記のイラストを再度見てみましょう。
![](https://8080stn.co.jp/wp-content/uploads/f330ba78a8366cc156406c14c6e370c7.png)
出典:法務局「配偶者居住権とは」
配偶者居住権により、以前までなら500万しか現金を受け取れなかったところ、1,500万を受け取ることが可能になります。
これにより、生活資金で困窮する可能性は極めて低くなると言えるでしょう。
生活資金面で不安を感じる方は採用すべき制度です。
代償金のリスクが減る
たとえば下記の場合を考えてみましょう。
相続遺産
- 不動産:2,000万
- 現金:1,000万
上記の場合、配偶者と子供は3,000万の半分である1,500万ずつを受け取る権利があります。
しかし配偶者が不動産を取得した場合、子供に500万を代償金として支払わなくてはいけません。
とはいえ配偶者居住権のみを取得すれば、この代償金を支払うリスクは大きく減るでしょう。現金面における現実的な観点でも、配偶者居住権は有効です。
配偶者居住権のデメリット
配偶者居住権のデメリットも3つ紹介します。
建物を売却できない
配偶者居住権を取得している場合、仮に引越し等で売却したいと思っても、売却の判断はできません。
というのも保有しているのは居住権であり、所有権は別の人が保有しているためです。そのため売却したい際は、配偶者居住権を放棄した後、所有権を持つ人に建物を売却してもらう必要があります。
そのため所有権を持つ人が拒否すれば売却は不可能であり、処理が面倒であることは確かです。
配偶者居住権を譲渡できない
売却と同様に、配偶者居住権の譲渡もできません。
なお所有権を持つ人が売却および譲渡を行うことは可能ですが、居住している物件に買い手や譲渡先が見つかることはまずないでしょう。
また居住者が認知症を患った場合、仮に病院や施設に入ることになっても権利は残り続けます。
つまり家には誰もいないのに、居住権のみが存在することになります。所有権を持つ人にとってもリスクがあるため、こういった側面も理解しておく必要はあります。
必要費の負担義務が生じる
固定資産税などの必要費については、配偶者が負担する必要があります。
民法第1034条にも「配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する」と明記されており、納税義務者は所有権保持者になりますが、きっちりと負担しなくてはいけません。
ほかにも地代や修繕費も「必要費」の枠組みに入るため、これらの費用を配偶者の方が負担する必要があることは認識しておくべきです。
まとめ
あらためて配偶者居住権とは、配偶者のどちらか一方が亡くなった場合に、残された配偶者が一緒に住んでいた家に亡くなるまで居住し続けることを認めた権利です。
配偶者居住権を活用することで老後の資金を確保しつつ住む場所を確保できるため、状況次第ではありますが活用すべき制度と言えます。
ただ、売却や譲渡が自分の意思では決定できないといったデメリットなども理解した上で、大きな問題が発生しなさそうか確認はしておくべきです。
なお共有名義における注意点として、子供や第三者が該当不動産の持分を所有している場合には配偶者居住権は適用されません。この点は把握しておきましょう。
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