もっと知りたい - 放棄する方法はあるの 2024.05.22
空き家は相続放棄して終わりではない|簡単に手放す方法についても解説
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空き家を相続したものの、不要なため相続放棄を検討している方も多いのではないでしょうか。しかし、相続放棄にはいくつか注意点やデメリットがあるため慎重に判断する必要があります。
相続放棄をすれば撤回することはできないので、なおさら相続財産をしっかり把握して慎重に検討しなければいけません。
この記事では、空き家の相続放棄の概要やメリット・デメリット、相続放棄する際の注意点について解説します。
この記事の目次
空き家を相続放棄するとどうなる?
空き家を相続放棄すると、次の相続順位の人に空き家の相続権が移ります。もし、自身が最後の相続人の場合は、国に返還することになります。
そして、相続放棄後も次の相続人もしくは相続財産管理人(相続財産清算人)が引き継ぐまでは、財産管理義務(財産保存義務)が残る点に注意してください。というのも、民法によって以下のように定められているからです。
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
なお、財産管理義務(財産保存義務)とは、相続放棄した人が次の財産を管理する人が選任されるまで、相続財産を自分の財産と同じように管理する義務のことです。
また、民法が令和5年4月1日に改正され、財産管理義務を負う者が「相続放棄した者」から「相続放棄の時点で相続財産を現に占有していた者」と明確化されました。
つまり、「故人の自宅に同居していた、もしくは事実上管理していた者」は空き家を相続放棄した後に、財産管理義務が発生します。
相続財産管理義務が残る期間
財産管理義務が残る期間は、次の相続財産管理人に財産を引き渡すまでです。他にも相続人がいる場合は、次の相続順位の相続人が相続権を持つことになります。
一方で他に相続人がいない場合や自分が最終順位の相続人の場合は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所で財産管理人を選任しなければいけません。
しかし、相続放棄しただけでは財産管理人を選任できません。というのも、利害関係人が申立権者とされていますが相続放棄しただけでは、利害関係人に該当しないからです。
つまり、相続放棄後に空き家管理の要求などがあった際に利害関係人となるため、財産管理人選任の申し立てができるようになります。
詳しくは裁判所の「相続財産管理人選任の申立てについて」で確認できます。
相続財産管理義務を怠った場合の責任
空き家を適切に管理しなかったことが原因で、第三者が被害を受けた場合は損害賠償請求されるリスクがあります。
たとえば、壁面の劣化で倒壊して通行人に被害が出てしまうケースや、害虫・害獣が近隣の住宅に危害を及ぼすケースなどが考えられます。
損害賠償請求されなくても、放火や犯罪に利用される懸念から近隣住民からクレームが入る可能性も考えられるでしょう。
空き家を相続放棄するメリットとデメリット
空き家を相続放棄するメリットとデメリットについて解説します。メリットとデメリットをしっかりと把握して、状況に合った適切な判断をしましょう。
空き家を相続放棄するメリット
空き家を相続放棄するメリットは、以下の通りです。
相続争いを避けられる
相続放棄を行えば、遺産分割協議に参加しなくてよくなるため、相続争いを避けることができます。遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分割を決めるための協議のことです。
もし、被相続人が遺書を残していない場合は遺産分割協議で、相続人全員が話し合って遺産の分割を決めなければいけません。
そのときに、遺産の分割で相続人同士が争いになるケースは少なくありません。その点、相続放棄をしていれば、面倒な相続争いに巻き込まれる心配はなくなります。
固定費を払う必要がなくなる
空き家を相続すると、固定資産税を支払わなければいけません。加えて、第三者に被害が出れば法的リスクがあるので、住まない場合は一定の管理費が必要となります。
しかし、相続放棄を行えば固定資産税を支払う必要はなくなり、次の財産管理人に引き渡せば固定費を負担する必要がなくなります。
もし、空き家を相続する予定ならば、固定費がかかるので早めに売却した方が経済的負担を減らせるでしょう。
負債も相続放棄することができる
空き家を相続放棄すれば、借金や家賃滞納などの負債の相続も放棄することができます。というのも、相続放棄は相続財産となる資産や負債などの権利や義務を放棄することを意味するからです。
つまり、借金や家賃滞納などの負債だけではなく、預貯金や株券などの資産の相続を放棄しなければいけません。
したがって、相続放棄をすることで負債の相続も放棄できるメリットがありますが、預貯金などの資産も放棄しなければいけない点に注意しましょう。
空き家を相続放棄するデメリット
空き家を相続放棄するデメリットは、以下の通りです。
相続権そのものがなくなる
まず大前提として、空き家を相続放棄した場合は相続財産の相続権そのものがなくなります。
つまり、都合よく空き家だけを相続放棄することはできず、預貯金や株券などの財産や借金などの負債もすべて相続放棄することになります。
したがって、相続放棄する際は自分の相続財産をしっかりと把握し、相続した後に空き家を活用できないかや売却できないかを確認してから判断しましょう。
後になって相続放棄を撤回できない
相続放棄は後になって、原則撤回することはできません。なお、詐欺や相続を強要された場合は除きます。
そのため、相続放棄を行う場合は自分の相続財産をきちんと確認し、相続放棄以外の手放す方法も検討してから慎重に判断しましょう
相続放棄をする際にトラブルになる可能性がある
相続放棄をする際は、他の相続人に話を通しておかないとトラブルに発展する可能性があります。なぜなら、自分が相続放棄を行えば相続順位が下の人に空き家の相続権が移るからです。
たとえば、空き家がひどく老朽化しており活用できず、売却で買い手を探すのに時間がかかりそうな場合は、誰も相続したいとは思わないでしょう。
また、相続放棄は他の預貯金や株券なども放棄しないといけないため、より一層自分が相続放棄をする際は、その旨を他の相続人に話して全員が納得できるように相談しましょう。
空き家を相続放棄するときの注意点について
空き家を相続放棄するときの注意点は、次の3つです。
相続放棄しても費用がかかる
冒頭で述べた通り、空き家を相続放棄したとしても、次の財産管理人が決まるまでは保存義務が発生するので管理費がかかります。
加えて、次の相続人がいない場合は家庭裁判所で相続財産管理人を選任しなければならず、相続財産管理人の報酬として、数十万円から数百万円の費用(予納金)がかかる可能性があります。
したがって、固定資産税の支払いはなくなりますが、次の相続財産管理人が見つかるまでの管理費と相続財産管理人の報酬として費用がかかる点に注意しましょう。
空き家だけを相続放棄することはできない
前述した通り、空き家だけを限定して相続財産の中から相続放棄することはできません。なぜなら、相続放棄とは「積極財産(経済的にプラスになる財産)」と「消極財産(経済的にマイナスになる財産)」の両方を放棄しなければいけないからです。
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法では上記のように定められており、相続放棄を行った場合は初めから相続人として存在しなかったものとして見なします。
他の相続人とトラブルになる可能性がある
相続放棄を行えば、相続順位が下の人に相続権が移ります。その際に、空き家が活用できないくらい老朽化している、または売却するのが難しい場合には相続人の間でトラブルになる可能性があります。
相続放棄はすべての相続権を放棄しなければいけないため、多くの積極財産を相続する相続人は空き家が消極財産に近い場合に、相続権が自分に移るのをよく思わないでしょう。
そのため相続放棄を行う場合は、事前に他の相続人と相談して納得してもらう必要があります。
また、相続放棄の期限は相続が発生したのを知ってから3ヶ月以内なので、余裕をもったスケジュールで話し合いを進めましょう。
相続放棄以外で空き家を手放す方法
相続放棄をする以外で、空き家を手放す方法を3つ解説します。
寄付する
空き家の状態や立地などによりますが、自治体や公益団体に寄付できる場合があります。しかし、多くの場合は寄付を断られます。
なぜなら、空き家を所有することで私たちが支払う固定資産税は、自治体の財源になるからです。
そこで状態が悪く活用できない空き家を寄付しても、自治体側はコストだけかかり固定資産税の税収も減るので寄付を受け入れられません。
したがって、自治体側が固定資産税の税収を賄える、またはそれ以上の利用価値があると判断されないと寄付は難しいでしょう。
売却する
最も一般的な手放す方法は売却です。空き家以外に相続したい財産がある場合は、一旦相続して空き家だけを売却する人が多いです。
しかし、リフォームや解体しないと空き家を活用できない、または再建築不可物件になっている場合は買い手を探すのが難しい傾向にあります。再建築不可物件とは、建物を新たに建設したり増築できない土地を指します。
弊社「はればれ商店」では買い手がなかなか見つからない処分しずらい難処分物件(再建築不可物件など)の取扱に注力しております。また、実勢価格から売却予想価格を導き出す簡易査定も行っているので、お気軽にお問い合わせください。
相続土地国庫帰属制度を利用する
最後の方法が、相続土地国庫帰属制度の利用です。相続土地国庫帰属制度とは、国に相続した不要な土地を返還できる制度です。しかし、空き家が建っている状態では利用できないため、解体して更地にしなければいけません。
相続土地国庫帰属制度を利用する際の注意点は次の3つです。
- 審査期間が6ヶ月から1年かかる
- 負担金を収めなければならない(数十万円ほど)
- 空き家を解体する必要がある(所有者負担)
相続土地国庫帰属制度は無料で利用できるわけではなく、空き家の解体費用や負担金を収める必要があるので、手放す最終手段として持っておくと良いでしょう。
相続土地国庫帰属制度については、法務省「相続土地国庫帰属制度について」をご参考ください。
空き家を相続放棄についてよくある質問
最後に空き家の相続放棄について、よくある疑問を2つ解説します。
相続放棄したら空き家はどうなる?
空き家を相続放棄すれば、次の相続順位が下の人が空き家を相続しなければいけません。次の相続人がいない場合は、家庭裁判所で選出された相続財産管理人が管理をします。
注意点としては相続財産管理人に報酬として、数十万円から数百万円の費用(予納金)が必要になる点です。
なお、相続放棄後は次の空き家の管理人が見つかるまでは、管理義務(保存義務)が残る点にも気をつけましょう。
相続放棄した家に入ることはできる?
相続放棄を行った後は、常識的な期間として目安3ヶ月以内であれば住み続けることができます。
加えて、相続放棄の申請期間は相続が発生したのを知ってから3ヶ月なので、合計で約半年間は家に住み続けられます。
まとめ
空き家を相続放棄した後でも、相続財産管理義務があるので、次の管理者が決まるまでは管理義務が発生することに気をつけなければいけません。
加えて、相続放棄を行えば空き家を含めたすべての相続財産を放棄する必要があります。そのため、一旦相続してから売却するのも一つの方法です。
弊社では買い手が見つかりにくい物件でも、司法関係者などの各種専門家や大手不動産会社と連携して売却を進めてまいりますので、ぜひお任せください。
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