もっと知りたい - 放棄する方法はあるの 2024.04.09

農地は相続放棄できる?どうしても処分したい場合の対処法も解説

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農地を相続することになったものの、必要ないため相続をしたくないと考えている方も多いのではないでしょうか。

そこで相続放棄について検討する方もいると思いますが、実際は農地のみを相続放棄することはできません。

そこでこの記事では、農地のみを相続放棄できない理由や、農地を手放す別の方法について解説します。

結論:農地のみを相続放棄することはできない

相続財産のうち、農地のみを相続放棄することはできません。

というのも、相続放棄とは相続が発生した財産すべてを放棄する制度であるためです。つまり、相続を放棄するということは、遺産を相続する権利そのものを放棄するということです。

たとえば、相続放棄をする場合は農地を含めて預貯金や株券といった相続遺産も放棄する必要が出てしまいます。そのため、農地を手放したいからと言って、安易に相続放棄をするのではなく、売却方法や活用方法を事前に把握して慎重に検討するべきでしょう。

なお農地を相続放棄した場合、他の相続人が相続することになります。安易な相続放棄は相続人間のトラブルを招くことになるので、放棄する前に他の相続人に事前に相談しておきましょう。

農地を相続放棄をすべきケースと相続すべきケース

農地のみを相続放棄することはできないため、相続放棄をするのであればその他の遺産も放棄しな手放さないといけません。

ここでは相続放棄した方が良いケースと、しない方が良いケースについて解説します。

農地を相続放棄すべきケース

農地を含めて相続放棄を検討すべきケースは、次の通りです。

  • 相続財産に負債がある
  • 農地以外に相続したい遺産がない

相続財産に負債がある

被相続人に借金や家賃滞納などの負債がある場合は、農地を含めて相続放棄をした方が良いでしょう。

というのも預貯金や株券などの財産を相続したとしても、結果的に負債を抱える可能性があるからです。

なお相続放棄をした場合、その負債は他の相続人が相続することになるので、勝手に決めるのではなくほかの相続人との間で相談しておくことが重要です。

農地以外に相続したい遺産がない

相続放棄では農地以外の相続財産も放棄しなければいけませんが、農地以外に相続したい財産および相続財産がない場合は、相続放棄しても良いでしょう。

相続人の間で遺産分割協議が難航している際は、相続放棄をした方がトラブルに巻き込まれず面倒な手続きもしなくて済みます。

しかし前述の通り、相続放棄をした場合は他の相続人が農地を相続する必要があります。そのため独断で決めるのではなく、事前に相続人全員に相談しておきましょう。

農地を相続すべきケース

農地を相続すべきケースは、売却しやすいまたは活用の余地がある農地です。具体的には次の通りです。

  • 市街化区域にある
  • 特定の条件を満たした市街化調整区域にある
  • 貸し出せるほど好条件な農地である

上記に該当しない場合でも、一度不動産会社に相談して簡易査定などをおこなってもらうと良いでしょう。

市街化区域にある

市街化区域は市街化を促進する地域なので、農地の転用許可を得られる可能性が高いです。

農地を宅地に転用することで、農地法で定められている「買い手は農家または農業従事者でないといけない」という条件がなくなります。そのため、宅地に転用できれば売却先を見つけやすくなり、農地と比べて活用範囲が広いので高値で売れる可能性が高いです。

農地を売却したい方は一度宅地に転用してから、売却する方法を検討しても良いでしょう。

特定の条件を満たした市街化調整区域にある

農地が市街化調整区域にある場合でも、大通りに面していれば農地を活用できる可能性があるので相続しても良いでしょう。

というのも、大通りに面していれば沿道サービスの活用場所として土地を貸し出せるからです。たとえば、田舎にあるコンビニや食堂、ガソリンスタンドなどが沿道サービスの代表例です。

また、高速道路のインターチェンジや港付近の農地であれば、倉庫や工場の土地として貸し出せる可能性もあります。

このように市街化調整区域の農地でも、状況によっては農地を転用して活用できるケースがあります。

貸し出せるほど好条件な農地である

農地が好条件であれば、相続を検討しても良いでしょう。なぜなら、農地を貸し出すことで一定の収入を見込めるからです。

たとえば、農地が荒れておらず雑草処理などの必要がない農地であれば、借主を見つけやすいです。このように農地を貸し出すことで土地の維持費を賄えたり、一定の収入を得られる場合もあります。

そのため、多少借金などの負債を相続する必要があっても、農地が好条件であれば相続放棄すべきでないと言えるでしょう。

農地を相続放棄する前に確認するべき注意点

農地を相続放棄する前に、確認しておくべき注意点について解説します。

  • 相続放棄しても農地の管理責任・義務は残る
  • 相続を知ったときから3ヶ月以内に手続きをする必要がある

相続放棄しても農地の管理責任・義務は残る

相続放棄をしたとしても、次の相続人が相続財産を管理できる体制が整うまでは、管理義務が続く点に注意しなければいけません。

相続放棄をしたとしても、農地の雑草処理や害虫対策などの管理をする必要があります。もし、管理をおこたって近隣の農家や住民に被害が出ると、法的なリスクも生じます。

さらに、管理行為の範囲を超えた行為(売却や登記名義の変更など)をおこなうと、遺産の相続を認めることになる点にも注意しなければいけません。

したがって、相続放棄をした場合でも土地のメンテナンスを定期的におこない、管理行為の範囲を超えるようなことはしないように気をつけましょう。

相続を知ったときから3ヶ月以内に手続きをする必要がある

相続放棄は自身が相続することを知ったときから、3ヶ月以内に手続きを行なわなければいけません。

ある程度の期間は設けられていますが、早めに手続きをおこなわなければ間に合わない可能性があります。

というのも、他の相続人が相続放棄に反対した場合、話し合いが続くかもしれないからです。

相続放棄をおこなえば、次の相続人に放棄した財産が移ります。農地という活用範囲が狭い土地を相続したくないと考える人が多いため、相続放棄を反対された場合は相続人同士で話し合いが必要となるでしょう。

話し合いが長引く可能性もあるので、相続放棄を考えている方は早めに相談や手続きを進めることをおすすめします。

相続税が払えないため相続放棄する場合の対処法

相続したいと考えているものの、相続税が払えないために相続放棄を検討している方は「納税猶予の特例」を利用しましょう。

「納税猶予の特例」とは、一定の条件を満たせば農地を相続した際の相続税の納税に猶予が付く制度のことです。

被相続人・相続人・農地のそれぞれに条件が設けられており、詳しい概要については国税庁の「No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」で解説されています。

「納税猶予」は一定金額以外の納税が猶予され、農業を続けれていれば最終的に納税が免除されるケースがほとんどです。

もし、相続税が払えないのが理由で農地を相続しない場合は、納税猶予を利用してみましょう。なお、農家ではなくても農地を貸し出すことでも納税猶予を受けることが可能です。

農地を含めた遺産を相続放棄する際の手続き

農地を相続放棄する際は、農地だけを放棄することはできず、相続する財産すべての相続を放棄する必要があります。

その注意点を踏まえたうえで、相続放棄の手続きについて解説します。

1.必要書類を揃える

相続放棄をおこなうには、次の3つの書類を用意しなければいけません。

  • 相続放棄の申請書
  • 申述人の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票か戸籍附票

相続放棄の申請書は、申述人1人あたり収入印紙800円が必要です。相続放棄の申請書は裁判所ホームページの「相続の放棄の申述」でダウンロードできます。

申述人の戸籍謄本は本籍地の役所で取得できます。戸籍謄本は被相続人と申述人の関係によって、別途で書類が必要な場合があるので、裁判所ホームページの「相続の放棄の申述」を確認してみましょう。

被相続人の住民票除票か戸籍附票は、被相続人が亡くなったことを証明するための書類です。被相続人が住んでいた地域の役所で取得できます。

2.家庭裁判所に相続放棄を申し出る

必要書類を、被相続人が住んでいた地域を管轄している家庭裁判所に郵送します。

前述の通り、相続放棄をおこなえるのは自分に相続が発生したことを知ったときから3ヶ月以内なので早めに手続きをおこないましょう。

3.照会書を送付する

相続放棄の必要書類を家庭裁判所に送ると、照会書が届きます。照会書とは、申述人に対する最終確認のための書類です。

照会書には記載項目があるので、必要事項を記入後に家庭裁判所に送り返します。その後、相続放棄申述受理通知書が届けば正式に相続放棄の手続きが完了します。

4.農業委員会に届出をする

最後に、農業委員会に名義変更の届出をしなければいけません。届出に必要な書類は「相続放棄後の登記事項証明書」です。

相続放棄後の登記事項証明書は法務局で取得するほか、オンラインで請求することも可能です。オンライン請求については、法務局「各種証明書請求手続」を参考にしてください。

また、農業委員会への届出は相続が開始してから10ヶ月以内と定められており期間を過ぎると、10万円以下の過料を支払わなければならない可能性があるので注意しましょう。

農地を相続放棄以外の方法で処分したい場合の対処法

農地のみを相続放棄することはできないため、他の相続したい財産がある場合は相続放棄以外で農地を手放しましょう。

ここでは、農地を相続放棄以外の方法で手放す方法を3つ解説します。

  • 農地を売却する
  • 農地を転用して売却する
  • 相続国庫帰属制度を利用する

農地を売却する

相続放棄はすべての財産を放棄しなければなりませんが、農地以外に相続したい財産がある場合は一旦相続して農地だけを売却するのも一つの手です。

しかし、農地の売却は農地法によって売却先は、農家または農業従事者と定められております。加えて、農地の売却には農業委員会の許可が必要です。

農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000229

農地の売却は農業委員会の許可や売却先の制限があるため、自身だけで売却するのが困難です。そのため、農地の売却を考えている方は一度専門の不動産会社に相談してみましょう。

農地を転用して売却する

農地を宅地などに転用すれば、農地法による買い手の制限がないため、売却しやすく高値で売れる可能性があります。

しかし、農地転用して売却する際は、都道府県知事の許可が必要と農地法第五条で定められています。

基本的には、市街化区域のような市街化を推進している地域や市街地近郊農地は許可されます。ただし、以下の農地では原則許可を得ることはできません。

  • 甲種農地
  • 第1種農地
  • 農用地区域内農地

»参考:農林水産省「農地転用許可制度の概要

農地をそのまま売却または転用して売却する場合、どちらでも農地法による制約があるので、弁護士のサポートは必須です。

弊社では弁護士だけではなく、税理士や一級建築士等の各分野のプロと連携して農地の売却をサポートいたします。簡易査定もおこなっておりますので、気軽にお問い合わせください。

»お問い合わせはこちらから

相続国庫帰属制度を利用する

相続国庫帰属制度は、令和5年4月27日に施行された国に土地を返すことができる制度のことです。

国に農地を返還することで、自身で農地を管理したり固定資産税を支払う必要がないので経済的に安心できるのがメリットです。

一方で国に10年間の標準的な管理費用と、審査手数料として土地一筆あたり14,000円がかかるので注意してください。

そのため、すぐに管理費用や手数料を用意できない場合は、次に紹介する売却をまずは検討してみましょう。

相続国庫帰属制度の手引きや負担金の算式は、法務局の「相続土地国庫帰属制度のご案内」と「相続土地国庫帰属制度の負担金」をご参考ください。

農地の相続放棄についてよくある疑問

最後に農地の相続放棄についての、よくある疑問を紹介します。

  • 農地を寄付することで手放せる?
  • 相続人全員が相続放棄した農地はどうなる?

農地を寄付することで手放せる?

農地を寄付を用いて手放せます。主な寄付先は以下の通りです。

  • 自治体
  • 公益法人
  • 認可地縁団体

農家の減少や高齢化による後継者の減少が背景にあり、寄付が受け入れられない場合もあります。

まずは、農地の寄付を受け付けているかどうかを問い合わせて確認してみましょう。

相続人全員が相続放棄した農地はどうなる?

相続人全員が相続放棄をおこなった場合、農地は最終的に国に帰属されます。しかし、国に帰属返還できるまでには1年以上かかるケースが多いです。

国に帰属返還できるまでの期間は、家庭裁判所から選ばれた相続財産管理人に管理費等を支払わなければいけません。

まとめ

相続財産の中から、農地のみを相続放棄することはできません。そのため、相続財産から農地のみを手放したい場合は、次のような対処法をとりましょう。

  • 寄付
  • 農地のまま売却
  • 農地転用して売却
  • 相続国庫帰属制度の活用

農地を売却したい方は、司法関係者と密に連携している不動産会社に相談するのがおすすめです。

というのも、農地売却では農地法によってさまざまな制限や要件があるからです。

弊社「株式会社はればれ商店」では、弁護士や税理士などの司法の専門家だけではなく、一級建築士などの​​専門家とも連携して売却を進めていきます。

不動産売却予想価格の簡易査定もおこなっておりますので、気軽にお問い合わせください。

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