もっと知りたい - 放棄する方法はあるの 2024.04.08

「農地あげます」の前に検討すべき選択肢とは?手放さずに放置するリスクも解説

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農地を相続したものの、農業を営む予定がなく対処に困っている方も多いのではないでしょうか。

農地を売却したり活用することで一定の収入を得られるので、無料であげるのはもったいないです。

そこでこの記事では農地を無料で譲渡する方法も解説しますが、農地の活用方法や無償譲渡以外の手放す方法についても解説します。

「農地をあげます」はそもそも可能?

農地をそのまま他人に無料であげることは可能です。しかし、一般的な土地とは違い下記のような制限と条件があるので注意しましょう。

  • 農業委員会の許可が必要となる
  • 譲渡先は農家または農業従事者である

農地が他人の手に渡る場合は農地法に基づいており、農地法の第三条では以下のように記載されています。

第三条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000229

つまり、無償譲渡や売却、貸し出しのどの場合であっても、他人の手に渡る場合は農業委員会の許可が必要になります。許可を受けずにおこなった農地の契約は、原則無効になります。

他にも、農地の譲渡先は「農業従事者」でないといけません。「農業委員会の許可」と「譲渡先は農家または農業従事者である」という条件を満たせば、無料で農地を他人にあげることができます。

農地を無料で手放す前に検討すべき方法

農地を売却したり・別用途に転用して活用することで、一定の収入を得られる可能性があるので無料で手放すのはもったいないと言えます。

そのため、農地を無料であげるのは最終手段でしょう。ここでは、農地を無料であげる前に確認しておきたい農地の活用方法および検討内容について解説します。

  • 農地をあげずに売却する
  • 農地を転用して活用する
  • 相続の場合は相続放棄を行う

農地をあげずに売却する

1つ目は農地を無料であげずに売却する方法です。農地の売却方法は、以下の通りです。

  • 近隣の農家に売る
  • 専門不動産業者を通じて売る

近隣の農家に売る

1つ目は、農地を無料であげるのではなく、農地を近隣の農家に売る方法です。

農家に売却するのであれば、農地法第三条の「譲渡先は農業従事者である」という条件は必然的に満たせます。

ただ近隣の農家に売却する場合は、価格だけではなかなか交渉が上手くいかない点に注意しなければいけません。

近隣の農家に売却する場合は、お金の売買条件だけではなく、相手の立場に立って真摯に交渉することが重要になるでしょう。

専門不動産業者を通じて売る

農地の購入者を自分で見つけられない方は、専門の不動産業者に売却を依頼する方法もあります。

業者に売却を依頼すれば、購入者探しや各種売却の手続きについてサポートを受けられます。

なお、一般的な不動産業者では農地の取り扱いに慣れていないケースもあるため、専門の仲介業者に依頼することをおすすめします。

»お問い合わせはこちらから

農地を転用して活用する

農地が第2種農地または第3種農地に該当する場合は、転用して活用することができます。第2種農地と第3種農地とは、農林水産省では次のように定義されています。

[第2種農地]
・土地改良事業の対象となっていない小集団の生産力の低い農地 等

[第3種農地]
・市街地にある農地 等

https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/tenyou_kisei/270403/pdf/sankou1.pdf

農地を転用できれば、駐車場やシェアポートなどにして活用できるため、賃料として一定の収入が見込めます。

しかし、農地を転用するには第2種農地・第3種農地に該当するだけではなく、以下の条件を満たさなければいけません。

  • 農業委員会からの許可
  • 都道府県知事からの許可

農地の転用は各機関からの許可や初期費用が必要で手間がかかりますが、一定の収入を得られる有効な手段と言えるでしょう。

相続の場合は相続放棄を行う

相続に農地が含まれている場合は、相続放棄で手放すことができます。

会社員や農地から遠い場所に住んでいる方は、農地を相続しても活用できずに最低限の管理費をかけて放置するケースも多いです。

ただ注意点として、相続を放棄することで農地を手放すことはできますが、「農地のみを相続放棄」することはできません。

相続放棄をするときは、農地だけではなくその他の遺産の相続も放棄する必要があります。

したがって、自身が相続する経済的にマイナスになる遺産と経済的にプラスになる遺産を把握して、慎重に検討しましょう。

農地を無償譲渡する方法

農地を活用できず、売却を試みたものの購入先が見つからない場合は、最後の手段として無償譲渡を検討してみましょう。

特に農地を活用できずに管理費と固定資産税を払い続けている場合は、無料でも譲渡した方が良いかもしれません。

農地を無料でもいいから手放したいと考えている方は、以下の方法を検討してみてください。

  • 近隣の農家に譲渡する
  • インターネットで貰い手を探す
  • 相続土地国庫帰属制度で国に返還する

近隣の農家に譲渡する

近隣の農家に売却ではなく、無料で譲渡するように申し出る方法もあります。農家に譲渡するので、農地法第三条の条件も満たすことができます。

しかし、近年では農業従事者の高齢化と人口減少の傾向があるため、譲渡先を見つけるのは難しい傾向にあります。

というのも農林水産省の農業労働力に関する統計では、平成27年から令和5年にかけて農業生産をまかなう基幹的農業従事者が175.7万人から116.4万人と、約60万人も減少しているためです。

»参考:農林水産省「農業労働力に関する統計

若者の農業離れとともに、自身の代で農業をやめる選択肢を取る農家も増えているため、農地の譲渡先を見つけにくい傾向にあるため、その点は把握しておきましょう。

インターネットで貰い手を探す

2つ目の方法は、インターネット掲示板やアプリなどで貰い手を探す方法です。

スマホ・パソコンがあれば、自宅から手間をかけずに譲渡先を見つけられるのがメリットです。

おすすめの掲示板やアプリは次の3つです。

  • 家いちば:ネット掲示板
  • ジモティー:アプリおよび掲示板
  • 空き家バンク:仲介サービス

ネット掲示板「家いちば」

家いちばは主に家を買いたい人と売りたい人をつなげるためのマッチング掲示板ですが、農地の売買もおこなわれております。

»出典:家いちば

売主が物件の情報を掲載し、購入希望者と直接交渉します。各種手続きは、家いちばが一貫してサポートしてくれるのがメリットです。

利用者は4万人ほどいるので、掲載しておくと購入希望者が現れるかもしれません。

地元の掲示板「ジモティー」

ジモティーは無料で譲りたい人と欲しい人をマッチングさせる、アプリ兼掲示板のようなサービスです。

家電や自転車、楽器などが主に取り扱われていますが、農地などの不動産も掲載できます。ジモティーは地域密着型の掲示板なので、近隣の農家の目に止まる可能性もあるでしょう。

»出典:ジモティー

購入者と直接現金のやり取りをおこなうため、セキュリティ面に不安を感じる方は別のサービスを利用しましょう。

しかし、あんしん決済を利用すればジモティーが仲介として入ってくれるため安心です。

購入者と直接現金のやり取りをおこなう場合は手数料はかかりませんが、あんしん決済は決済時の5%が手数料として差し引かれるので注意しましょう。

仲介サービス「空き家バンク」

空き家バンクは自治体が空き家を持っている方と購入希望者をマッチングさせる仲介サービスです。

農地に空き家が付いている不動産は、空き家バンクで購入希望者を探せます。自治体が運営しているので安心です。

»出典:空き家バンク

物件情報は無料で掲載でき、空き家の購入またはリフォームの費用の補助金制度が用意されているのが、空き家バンクを利用する最大のメリットでしょう。

一方で「農地のみ」の掲載はできないため、農地を所有している場合はその他のサービスを利用する必要があります。

相続土地国庫帰属制度で国に返還する

相続した不動産を手放したい方のために2021年に施行されたのが「相続土地国庫帰属制度」です。

相続土地国庫帰属制度で返還された土地は国有地として国が管理してくれるため、農地に関する近隣のクレームが自分自身に入らない安心感を得られるのが1つのメリットでもあります。

一方で、完全に無料で手放せるわけではなく、土地の管理費10年分を負担金として納めないといけません。下記の法務省のページでは、負担金の考え方や算定式について詳しく解説されています。

»参考:法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金

また、水利費等の賦課金を払っている場合は対象から外れてしまいます。

しかし、農地を手放すことができずに管理費や固定資産税を払い続けている方は、相続土地国庫帰属制度を利用することで、比較的低コストで手放せます。1つの選択肢として知っておくだけでも良いでしょう。

農地を手放さずに放置するリスク

農地を手放すのを後回しにして、管理をおこたって放置しているとさまざまなリスクがあります。

固定資産税や管理費がかかるだけではなく、他人に迷惑をかけたり、子や孫世代が苦労する可能性があるので放置するリスクをしっかりと把握しておきましょう。

  • 相続人に迷惑がかかる
  • 固定資産税や管理費がかかる
  • 近隣の農地へ悪影響を及ぼす

相続人に迷惑がかかる

農地を相続して所有し続けてご自身が亡くなられた場合、子供や孫が相続することになります。

つまり、農地の管理費や固定資産税を払い続けている場合は、その負担を子供や孫の世代が引き継ぎます。

たとえば、草刈りなどの管理費や固定資産税の支払いで年間に数十万円を負担しなければならないケースもあるでしょう。

したがって、農地を放置した影響はご自身が亡くなられたときの相続人にも影響するので、農地を活用しないのであれば早々に手放した方が良いでしょう。

固定資産税や管理費がかかる

農地を持っているだけで、最低限の管理費と固定資産税がかかります。そのため、売却や活用の目処が立っていないのであれば手放した方が良いでしょう。

特に市街化区域農地や特定市街化区域農地に該当する場合は、固定資産税の経済的な負担が大きくなります。

なぜなら、市街化区域農地や特定市街化区域農地は農地としての評価ではなく、「宅地並評価」で評価され固定資産税が高くなる傾向にあるからです。

下記の農林水産省が公開している「農地の保有に対する税金(固定資産税)」では、農地区分による固定資産税の算出方法について詳しく解説されています。

»参考:農林水産省「農地の保有に対する税金(固定資産税)

「農地は固定資産税が安い」とインターネットに書かれていることも多いですが、農地の区分によって評価方法が変わる点に気をつけなければいけません。

したがって、農地は手放さずに放置するのではなく、活用しないのであれば早々に譲渡あるいは売却しましょう。

近隣の農地へ悪影響を及ぼす

農地を放置すると、固定資産税などの経済的な負担だけではなく、近隣の農家に迷惑をかけてしまう可能性があります。

というのも、管理がずさんになると害虫や害獣、臭いなどさまざまな悪影響が出るからです。

たとえば、放置した農地で発生した害虫が近隣の農地の作物を傷つけて、収穫数に影響する場合があります。この場合は近隣の農家から損害賠償を請求される可能性があります。

他にも火災や不法投棄の場所として利用されることもあるので、農地を管理できないのであれば早く手放した方が良いでしょう。

農地の売買・無償譲渡は専門家に相談するのがおすすめ

農地を売却・譲渡したいのであれば、司法に強い不動産会社に相談するのがお勧めです。

というのも、農地の売買には農地法や農業委員会への許可、転用する場合は都道府県知事の許可が必要で手続きが複雑だからです。

独力で買い手を探して売却するにも、買い手を探す手間や農地法などの法律の問題があるので難しいです。

弊社「株式会社はればれ商店」では弁護士や税理士、一級建築士などの各種分野のプロと連携して売却を進めてまいります。

不動産の売却予想価格の簡易査定もおこなっているので、気軽にお問い合わせください。

»お問い合わせはこちらから

まとめ

農地は近隣の農家やインターネット掲示板・アプリを利用して、無償で譲渡できます。

しかし、農地を売却や宅地などにして活用することで、無償譲渡せずに一定の収入を得られる可能性があります。

農地を売却・活用する際は、農地法をしっかりと把握して農業委員会や都道府県知事から許可を得なければいけません。

自身でおこなうには手続きが複雑で、法的な課題も存在するため専門の不動産会社に相談するのが最もおすすめです。

農地を放置している場合は、さまざまなリスクがあるので、早めに決断して対処しましょう。