はじめて - 難処分物件とは? 2024.04.02

土地を共有名義で所有するメリット・デメリットとは?注意事項を徹底解説

土地を所有する際、共有名義にする選択を考える場合もあるでしょう。

ただ共有名義にはメリットもある一方で、基本的にはデメリットが多いと言えます。そのため、安易に共有名義にすることはおすすめしません。

この記事では、土地の共有名義に関する基本的な知識から、すでに共有名義にしている方に向けた共有名義の解消方法なども詳しくお伝えします。

そもそも土地の共有名義とは

土地の共有名義とは、1つの土地を複数人で所有することを意味します。

複数人で出資して土地を購入し、その出資額に合わせて持分割合を決定します。たとえば1,000万の土地をAさんが600万、Bさんが200万、Cさんが200万を出して購入すれば、持分割合は「Aさん:Bさん:Cさん=6:2:2」となるわけです。

つまり共有名義の特徴は下記になります。

  • 複数人で出資して購入する
  • 出資額に合わせて持分割合が決まる

なお共有名義で土地を含めた不動産を所有する場合、持分割合が重要な要素になります。次項で、単独名義との違いを確認しましょう。

共有名義と単独名義の違い

共有名義と単独名義の違いは、該当の不動産を自由に管理できるかどうかです。共有不動産の管理行為(広義)は以下3つに分類されます。

  • 保存行為→土地の修繕など
  • 管理行為→土地を貸すなど
  • 変更行為→土地を売却するなど

上記の行為に対して、必要な持分割合は下記のとおりです。

  • 保存行為→誰でも可能
  • 管理行為→過半数の同意が必要
  • 変更行為→すべての同意が必要

たとえば変更行為にあたる「土地の売却」を考えても、共有者の1人が反対すれば、その行為は実行できません。

このように、共有名義不動産は扱いに制約がかかる背景から、共有者同士でトラブルが発生しやすいと言えます。

そのため安易に共有名義にすることはおすすめできません。次項より、土地を共有名義にするメリットとデメリットを確認しておきましょう。

土地を共有名義にするメリット

土地を共有名義にするメリットは、以下の3点です。

1人あたりの負担額が減る

当然の部分にはなりますが、共有名義で土地を購入する場合、1人あたりの負担額は減ります。

仮に1,000万の土地を2人で均等に負担する場合、1人の支払額は500万で済みます。そのため金銭面の負担を減らしつつも、希望の土地を購入できることはメリットと言えるでしょう。

なおAさんとBさんの2人で500万ずつ出資したにも関わらず、Aさんの単独名義での登記とした場合は、BさんからAさんに500万の贈与があったと認識され、贈与税が発生します。

ほかにも出資額通りに持分割合を定めない場合、差分は贈与されたと認識されるため、その点は注意しておきましょう。

住宅ローン減税を人数分適用できる

住宅ローン減税とは、毎年ローン残高から一定の割合を所得税から控除する制度です。

*最大13年

そのため夫婦などでペアローンを組んだ際は、住宅ローン控除を2人分受けられます。単独名義でローンを組めるのは1人だけのため、この点もメリットと言えるでしょう。

なお住宅を取得した際に適用される条件ではあるため、土地のみでは適用できません。この点は注意が必要です。

3,000万円特別控除を人数分適用できる

3,000万円特別控除とは、住宅を売却した際に発生した譲渡所得から最大3,000万円の控除が適用できる制度です。

こちらも住宅ローン減税と同様に、夫婦2人で購入した場合は2人分適用できるため最大6,000万円の控除が可能となります。

なお譲渡所得とは、売却額から取得額や諸費用を差し引いた額であり、売却額そのものではありません。そのため1億円を超える不動産でない限り、3,000万円特別控除を複数人分適用する場面は実際のところは少ないでしょう。

共有名義だからこそ活用できる方法でもあるため、知っておいて損はありません。

土地を共有名義にするデメリット

ここからは土地を共有名義にするデメリットです。以下4点を紹介します。

売却には全員の同意が必要

共有名義の土地を売却するには、共有者全員の同意が必要となります。

また多くの書類に署名や押印(場合によっては実印)が共有者全員分必要となるため、その手続きも苦労することになるでしょう。

なお、売却については共有者のうち1人でも反対すれば実施できません。仮にご自身が9割の持分を所有していても、残り1割を所有する共有者が反対すれば不動産全体での売却はできません。

また後にも詳しく話しますが、共有名義の不動産は相続等で共有者が段々と増えてしまう構造です。

そのため共有者がご自身含め2人だけなら協議は容易かもしれませんが、共有者が3人4人5人・・・と増えてしまうと、そもそも協議を行うこと自体が難しくなる恐れもあります。

共有者単独で決められることが少ない

共有名義不動産は、その性質上1人で決められることが少ないと言えます。

たとえば土地の売却はもちろん、貸し出しなどについても持分割合過半数の同意が必要*であり、思うように不動産を管理できません。

*条件によっては全員の同意が必要。

そのため不動産を取得後、何かを決定する際に協議が必要となり、煩わしさを感じてしまうことは大いにあるでしょう。

相続により権利関係がより複雑になる

共有名義不動産にトラブルが多い背景には、権利関係の複雑さがあります。

先ほど簡単に説明しましたが、共有者が死亡した際は相続が発生し、共有者の持分は子供などに分配されます。そのため共有者が段々と増えてしまい、気づけば10人以上の人数が共有者であることも珍しくないでしょう。

2人ならまだしも、10人以上となると意見が合わないのは当然のようにありますし、売却を含めた協議を行う際も、一向に話が進まないといった事態も発生します。

そしてその状態を、また相続によって子供に受け渡すことにも繋がる恐れがありますので、その点も共有名義で土地を所有するデメリットとして認識しておくべきです。

常にトラブルのタネを抱えることになる

共有名義で不動産を所有すると、常にトラブルが発生するリスクを抱えます。

その代表例が売却など、不動産の管理についてです。売却以外にも共有者が管理費(維持費)を負担してくれないといった細かい点でのトラブルも実際には多くあります。

また先述した相続により、共有者が5人、10人と増えてしまうと、協議を実施すること自体が困難になります。そのため、共有名義を解消したいとお考えの方は、早めに行動に移すことをおすすめします。

土地の共有名義を解消する方法

土地の共有名義を解消する方法は、主に以下6つです。

共有者全員で売却

1つ目は、共有者全員で売却する方法です。

共有者全員の同意が必要にはなりますが、1つの不動産として売却できるため、次に紹介する共有持分のみの売却とは違い相場通りの価格で売買可能です。

なお売却金額の分配については、持分割合に従います。仮にAさんとBさんが1/2ずつの持分を所有しており売却金額が1,000万だった場合は、それぞれ500万ずつ受け取ります。

自身の持分のみ売却

2つ目は、自身の持分のみを売却する方法です。

実は共有持分のみを売却するという方法もあります。そして自身の共有持分のみなら、共有者の同意は必要ありません。そのため今すぐに買取相手を探して、売却の手続きを実施することが可能です。

ただ1つ注意点があります。共有持分のみの売却のため、相場通りの価格で売買は成立しません。というのも、売却するのは不動産ではなく共有持分であり、買主は該当の不動産を自由に扱えるわけではないためです。

一般的には相場の1/3〜1/2ほどと言われており、この点は事前に認識しておくべきでしょう。

共有者の持分の買取

3つ目は、共有者の持分を買い取る方法です。

たとえば自身は売却の意思はなくても共有者には売却の意思があり、共有持分のみの売却を検討している時に提案すべき方法となります。

共有者としても買主を探す手間が省けますし、共有者が2人の場合は単独名義で不動産を所有できる機会です。

もちろん、買い取るための資金があることが前提にはなりますが、共有者から売却を持ちかけられた際に売却の意思がなければ、買取の話を提案してみても良いでしょう。

自身の持分を放棄

4つ目は、自身の持分を放棄する方法です。

持分放棄とは、自身の意思のもと、持分の所有を放棄できる方法になります。放棄した共有持分は、他の共有者に帰属します。

共有者に分配される際は、共有者の持分割合に応じて分配される仕組みです。そのため、仮に共有者が3人いて全員が1/3ずつの持分を所有していた場合は、自身の持分1/3の半分である1/6の持分が2人の共有者に分配されます。

なお持分放棄には共有者の同意などは必要なく、自身の判断のみで実施可能です。

自身の持分を贈与

5つ目は、自身の持分を贈与する方法です。

持分贈与は、自身が決めた特定の相手に持分を渡す方法となります。そのため持分放棄とは少し内容が異なります。

持分放棄は、共有者の持分割合に応じて分配される仕組みですが、持分贈与は特定の相手に渡される仕組みです。

ただ注意点が1つあります。それは、贈与された側は贈与税を支払う必要があることです。そのため贈与する側、される側で事前に相談は細かく行っておきましょう。

後に「贈与税が発生するなんて把握していなかった」となると、トラブルに繋がるリスクもあります。

共有物分割請求訴訟

7つ目は、共有物分割請求訴訟により解消する方法です。

そもそも共有物分割請求訴訟とは、裁判によって共有名義の解消を行う方法であり、共有者同士で協議を行うも決着が付かない場合に、裁判所に判断を委ねる、いわば最終手段とも言える方法です。

裁判では基本的に、現物分割と呼ばれる土地の分筆が検討されます。ただ土地の分筆が難しい場合は、共有者のどちらかが相手の持分を買い取る代償分割が検討されて、それも難しい場合は競売により現金化して分割する方法が採用されます。

なお競売では、相場よりも低い価格で落札されることが一般的です。そのため競売を用いた解消方法は避けておきたいところです。

また裁判を行うにあたって、費用と時間もかかるため推奨できる方法ではありません。当事者同士でどうしても話に折り合いが付かない場合の、1つの手段として知っておいて損はないでしょう。

土地の共有名義に関するよくある疑問

最後に、土地の共有名義に関するよくある疑問を3つ紹介します。

相続時に共有名義にしない方法は?

相続時に共有名義にしない方法は、基本的に下記3つがあります。

換価分割

換価分割とは、相続した土地を売却して、売却によって得た現金を相続人で分割する方法です。

公平に遺産分割が行える、代償金の支払いが不要といったメリットがある方法になります。

代償分割

代償分割とは、該当の不動産を1人が相続して、他の相続人に相続分に合う金銭を支払う方法です。

換価分割と違い、相続人の誰かが資産を引き継ぐことができる点が特徴となります。ただ相続人に金銭を支払う必要があり、相続する不動産によっては用意できない場合もあるでしょう。

そのため、不動産の価値と支払いが可能かどうかは事前に確認しておく必要があります。

現物分割

現物分割とは、相続遺産をそのまま、相続人それぞれで分割して相続する方法です。

たとえば相続対象の遺産が土地の他に、現金や株式などがあったとしましょう。その場合に、1人は土地を、他の人は現金、株式を相続するといった形になります。

このように、共有名義にせずに相続する方法はいくつかあるため、相続人同士で話し合い、適切な方法で相続することをおすすめします。

共有名義人が音信不通の際の対処法は?

共有名義の土地の売却を考えた際に、共有者が行方不明の場合は住民票を用いた追跡調査を行い探します。

ただ見つからないケースも多く、その場合は「不在者財産管理人」を家庭裁判所によって選任してもらいます。そして共有者と不在者財産管理人、家庭裁判所の3者間で、売却の意思決定を行う流れです。

なお不在者財産管理人とは、行方不明の方の財産を管理・保全する人を意味しており、売却の意思決定をする際は家庭裁判所の許可が必要となります。

また不在者財産管理人を選任してもらうには、行方不明になってから1年以上が経過した時のみです。1ヶ月ほどでは選任はされませんので、その点は把握しておきましょう。

共有名義で登記する際に注意すべきことは?

主に下記2点です。

  • 持分割合を正確に決める
  • 共有者と良好な関係を築く

持分割合については、出資額に基づき決定しましょう。出資額に基づかない場合は贈与と認識され贈与税が発生したり、後に共有者間でトラブルになる恐れがあります。

共有名義で土地を所有する1番のデメリットは、共有者間でのトラブルです。そのため日頃から良好な関係性を構築することを意識して、不動産の管理について話し合いが必要になった時に、そもそも協議が行えない、険悪な雰囲気であるといった状態を避けることが最適です。

まとめ

再度、土地を共有名義で所有するメリットとデメリットをまとめます。メリットは下記です。

  • 1人あたりの負担額が減る
  • 住宅ローン減税を人数分適用できる
  • 3,000万円特別控除を人数分適用できる

デメリットは下記の通りです。

  • 売却には全員の同意が必要
  • 共有者単独で決められることが少ない
  • 相続により権利関係がより複雑になる
  • 常にトラブルのタネを抱えることになる

トラブルに巻き込まれることを事前に防ぐために、共有関係の解消も早めに検討しても良いでしょう。

なお弊社は共有持分の扱いを熟知しており、数々の問題解決に注力しております。

そのため共有持分に関して悩み事などありましたら、まずはお気軽にご相談ください。もちろん相談を常に承っております。

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