はじめて - 訳あり物件の手続き・考え方 2024.03.25
共有持分の持分割合の決め方とは?住宅ローン・相続時のケース別も解説
不動産を共有で購入する際、「共有持分の割合」を決定する必要があります。
そして持分割合は厳密に設定する必要があり、適当に決めると贈与税が発生するなど思わぬトラブルが発生する可能性があります。
この記事では、不動産購入時の持分割合の決め方や相続時の割合比率など、知っておくべき情報を紹介します。
共有持分の持分割合の決め方とは
まずは、不動産購入時の持分割合の決め方を紹介します。
計算方法は出資額に基づく
決め方はとてもシンプルで、出資額(負担額)の比率をそのまま反映させる形です。
たとえば5,000万の家を夫婦で購入して、
- 夫:2,500万負担
- 妻:2,500万負担
- 出資比率|1:1
この場合、持分割合は
- 夫:1/2(50%)
- 妻:1/2(50%)
- 夫:3,000万負担
- 妻:2,000万負担
- 出資比率|3:2
この場合だと持分比率は
- 夫:3/5(60%)
- 妻:2/5(40%)
上記のように、出資額に合わせて決定するのが持分割合の決め方です。
持分が割り切れない場合の決め方
では、下記の場合はどうすべきでしょうか。
1,500万の不動産購入
- 夫:800万
- 妻:700万
- 出資比率|8:7
- 夫:8/15(53,33%)
- 妻:7/15(46,66%)
上記だと比率が割り切れません。
ですのでこの場合、「夫:54%|妻:46%」に端数を調整して割合を決定します。
なおこの場合、妻から夫に持分の一部が移っているので「贈与」が発生していると法律上では考えます。今回のケースでは、下記の計算式です。
1,500万×(54%-53,33%)=約10万円
つまり妻から夫に「約10万円」の贈与がされた…と定義されます。そこで問題なのが「贈与税」です。とはいえ贈与税は「年間110万円以上」から発生するので今回のケースでは問題ありません。
しかし持分割合を調整する際は、贈与税も考慮して行うことをおすすめします。
資金援助がある場合の計算方法
そもそも資金援助での不動産購入には、下記の3パターンがあります。
資金の贈与
資金の贈与の場合、たとえば夫が親から1,000万を贈与してもらい、夫3,000万・妻2,000万で5,000万の不動産を購入すると夫:3/5(60%)妻:2/5(40%)の比率になります。
ただ親から夫に1,000万の贈与があるため、贈与税が発生します。持分割合には特別影響はありませんが、贈与税の対応が必要です。
資金の借入
贈与ではなく借入にしたい場合、借用書を作成して借入にする手段もあります。
ただこの場合もあくまで資金を借入しているに過ぎないので、資金の借入をした人の出資比率が高まる構図になるでしょう。
共同出資
たとえば親が1,000万を出資して下記の状況になるとします。
- 親:1,000万
- 夫:2,000万
- 妻:2,000万
この場合、持分割合は下記になります。
- 親:1/5
- 夫:2/5
- 妻:2/5
たとえ住むのは夫と妻の2人であっても、共同出資した人も持分割合を出資額分取得する仕様です。
住宅ローンの種類別|持分割合の決め方
ここからは、住宅ローンの種類3つによる持分割合の決め方を紹介します。
基本的には「ローンの負担額=出資額」と考え、持分割合を設定しますが、それぞれの特徴なども合わせて確認してみましょう。
連帯保証
連帯保証とは、保証人が、本来の債務者と連帯して債務を負担することを言います。
連帯保証では直接的に連帯保証人に返済義務はありませんので、たとえば夫が債務者であり妻が保証人なら妻に持分はありません。
ただし、頭金を出している場合は別です。たとえば5,000万の不動産の頭金として夫が500万、妻が500万、残りの4,000万は夫のローンの場合、妻は1/10を負担しているので持分割合は「夫:9/10(90%)|妻:1/10(10%)」となります。
連帯債務
そもそも連帯債務とは、1つの借り入れを複数の者それぞれが全額の債務を負うことをいいます。住宅ローンにおける連帯債務の場合、夫婦などどちらか1人が主債務者となり、もう1人が連帯債務者として借り入れを行い、連帯債務者も主債務者と同じ債務を負う仕組みです。
たとえば5,000万の不動産に対し夫婦で5,000万のローンを組み、夫が3,000万を、妻が2,000万を負担する場合なら持分割合は「夫:3/5(60%)|妻:2/5(40%)」となります。
どちらも債務者ですので、2人とも住宅ローン控除を受けられることが特徴です。
※住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住まいを購入した場合に、「年末時点での住宅ローンの残高の0.7%」が、入居時から最長13年間にわたって、給与などから納めた所得税や住民税から控除される制度のこと。
1人年間40万まで控除されますので、夫婦2人なら最大80万の節税につながります。
ただどちらかが仕事を辞めて返済がむずかしくなり返済を補助する場合、この行為も「贈与」と認識されます。ライフスタイルに合わせて設定することが最適でしょう。
ペアローン
ペアローンとは、夫婦それぞれが個別に住宅ローンを組む方法です。
大きな特徴として、債務者が夫のローンでは妻が連帯債務者に、妻が債務者のローンでは夫が連帯債務者になるという点です。
なおペアローンでの持分割合の決め方は、「頭金+返済額」で計算します。
たとえば5,000万の不動産を購入する際、夫が頭金とローンで3,500万、妻がローンで1,500万の場合は「夫:7/10(70%)|妻:3/10(30%)」となります。
ペアローンも連帯債務と同様に住宅ローン控除を2人とも受けられることが特徴です。
ただ死亡等などが起きても、保険金でローンが完済されるのはその該当者のみになります。この辺りはそれぞれの特徴をくわしく見ておくべきでしょう。
相続時の持分割合の決め方について
ここからは、相続時の持分割合の決め方について3つ紹介します。
遺言書で決める
遺言書に持分割合の記載がある場合、基本的にその記載が優先されます。
ただ相続人同士で明らかに不公平な配分になっていたり、「遺留分」が侵害されている場合は請求することが可能です。遺留分は遺言よりも強い効力を持っていますので、当人同士で話し合い解決することができるでしょう。
法定相続分で決める
遺言書等がなければ、法定相続分によって決定します。
そもそも法定相続分とは、被相続人の財産を相続する場合に、各相続人の取り分として法律上定められた割合をいいます。
被相続人の配偶者 | 常に相続人 |
---|---|
被相続人の子 子が既に死亡している場合は孫 | 第1順位 |
被相続人の父母 父母が既に死亡している場合は祖父祖母 | 第2順位 |
被相続人の兄弟 兄弟が既に死亡している場合は兄弟の子 | 第3順位 |
配偶者は必ず相続人となり、配偶者と、相続順位の高い人のみが相続を受けます。たとえば被相続人の子がいる場合、被相続人の父母は相続の対象にならないというわけです。
実際の例を見てみましょう。
子供2人の4人家族で、夫婦それぞれ1/2ずつの持分を所有しており、夫が他界した。
- 相続人:妻と子供2人
- 妻の受け取り分:1/2(夫の持分)×1/2(妻の法定相続分)=1/4
- 子供1人の受け取り分:1/2(夫の持分)×1/2(子供2人の法定相続分)÷2(2人で等分)=1/8
つまり、全体では下記の配分になります。
- 妻:3/4
- 子1:1/8
- 子2:1/8
遺産分割協議で決める
遺産分割協議とは、相続人全員で相続配分を話し合いの上で決める方法です。
ただ下記2点は守らなければいけません。
- 相続人全員が参加して協議を行うこと
- 協議の結果を書類に残すこと
上記がないと効力はないため、強引に話を進めることはできません。相続人同士でトラブルがないよう、書類に残し示す必要があります。
持分割合の決め方に関するよくある疑問
最後に、持分割合に関するよくある疑問をまとめます。
持分割合の確認方法は?
基本的には、下記2つの方法で確認できます。
- 登記簿
- 固定資産税通知書
ただ固定資産税通知書には記載されていないケースもあります。確実に確認できるのは登記簿ですので、そちらがおすすめです。
持分割合はいつまでに決める?
持分割合は登記事項証明書に記載されますので、一般的には売買の契約を完了してから1ヶ月以内です。
1ヶ月を過ぎると罰金を課せられる可能性もあるので、購入前に話し合って事前に決めておくことが最適でしょう。
出資額に合わせず決めるとどうなる?
贈与税が発生する可能性があります。
たとえば5,000万の物件を購入した際、夫が2,000万、妻が3,000万の出資をしているにも関わらず「夫:1/2|妻:1/2」で設定すると、2,500万ずつの出資になるため、妻から夫に500万の贈与が行われたと認識されます。
贈与税は年間110万以上に発生しますので、この場合だと「500万-110万=390万」に贈与税が課せられます。
この点はよくある事例なので、注意しておきましょう。
まとめ
持分割合は、基本的には「出資額の比率」で決定します。
適当に決めてしまうと贈与税の発生など、思わぬトラブルが起きるかもしれません。原理原則を理解しておき、正しい処理をしていきましょう。
なお共有持分の比率によって所有する不動産の管理をスムーズに行える、もしくは行えない背景もあります。共有持分にするメリットやデメリットも、合わせて理解しておくと良いでしょう。
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