はじめて - 購入・所有の注意点と税金 2024.04.09

農地の固定資産税を計算したらいくらになる?税金の優遇措置についても解説

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農地を相続などで所有することになった場合、管理費とは別で固定資産税を納税する必要があり所有者に負担がかかります。

そこで実際に、自身の所有する農地の固定資産税がいくらになるか気になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では農地にかかる固定資産税の計算方法を農地区分から詳しく解説します。また、固定資産税の減免や免除についても紹介します。

農地の固定資産税に関する4つの区分について

農地の固定資産税は、農地の区分によって評価方法が変わります。そのため、農地の固定資産税を計算する前に、農地の区分についてまずは確認しましょう。

農地の区分は次の4つです。

  • 一般農地
  • 生産緑地
  • 特定市街化区域農地
  • 一般市街化区域農地

なお、自身が所有している農地区分は地域の農業委員会や全国農地ナビで確認できます。

一般農地

都市計画区域の調整区域内の農地や、生産緑地としての農地を「一般農地」と言います。

一般農地は長期的に農業を営むことを前提としているので、農地の収益性に基づいて売買価格が決定されるのが特徴です。

一般農地は課税について、負担調整措置が講じられます。総務省は、負担調整措置を以下のように説明しています。

課税の公平の観点から、地域や土地によりばらつきのある負担水準(今年度の評価額に対する前年度課税標準額の割合)を均衡化させることを重視した、新たな税負担の調整措置が講じられ、負担水準の高い土地は税負担を引き下げ又は据え置き、負担水準の低い土地はなだらかに税負担を上昇させることによって負担水準のばらつきの幅を狭めていく仕組み

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_09.html

簡単に言うと、土地価格の課税標準額の割合は地域によってばらつきがあるため、価格の6分の1を上限に課税標準額を均衡化させる措置のことです。 

一般農地は農地評価を用いて固定資産税評価額が算出され、負担調整措置があるので固定資産額は低くなる傾向にあります。

生産緑地

生産緑地は市街化区域内の農地で、以下3つの代表的な条件を満たした都市計画法によって指定されている農地を指します。

  • 農林漁業の継続が可能である
  • 公共施設等の敷地として適する
  • 500平方メートル以上の規模である※

※市区町村が条例を定めれば、300平方メートル以上まで引き下げることができるようになりました。

»参考:国土交通省「生産緑地制度の概要

生産緑地は生産緑地法によって農地の転用が規制されており、課税は一般農地と同じ扱いで固定資産税は安くなる傾向にあります。

特定市街化区域農地

特定市街化区域農地は、「首都圏・近畿圏・中部圏」から構成される三大都市圏内の農地を指します。

特定市街化区域は都市圏に位置しており、宅地として転用される可能性があるため、評価方法は一般農地や生産緑地と違い、宅地に近い評価方法(宅地並評価)になります。

したがって、農地として評価される一般農地や生産緑地よりも固定資産税が高くなる場合がほとんどです。

一般市街化区域農地

一般市街化区域農地は、市街化区域内で特定市街化区域農地以外の農地のことです。

一般市街化区域の農地も特定市街化区域の農地と同様に、将来的に宅地として転用される可能性があるため宅地に近い評価方法(宅地並評価)になります。

しかし、特定市街化区域の農地よりも宅地としての転用の可能性は低く、負担調整措置が適用されるため、実質は農地に近い課税(農地に準じた課税)となります。

農地の固定資産税の計算方法

農地の固定資産税の計算方法を確認する前に、前述した農地区分ごとの評価方法について把握しておく必要があります。

ここでは農地区分ごとの評価方法を確認し、実際の計算方法を解説します。

前提:農地区分によって評価方法が異なる

農地の評価方法には、農地のまま利用される前提とした「農地評価」と宅地などに転用される可能性がある「宅地並評価」の2つがあります。

農地区分評価方法評価概要
一般農地農地評価・農地で得られる収益性を考慮した評価・負担調整措置あり
生産緑地
一般市街化区域農地宅地並評価・宅地として利用される可能性が高いため宅地と同様の評価・負担調整措置なし※
特定市街化区域農地
※一般市街化区域の農地は現状農業を営んでいるのであれば、負担調整措置がおこなわれます。
»参考:国税庁「農地に対する固定資産税の特例 (負担調整措置)

農地として今後も利用される可能性が高い一般農地と生産緑地、または一般市街化区域の農地で現状農業を営んでいる場合は、負担調整措置が適用されます。

一方で特定市街化区域農地は、宅地として利用される可能性が最も高く、負担調整措置は受けられず宅地と同様の評価となるので固定資産税が高くなる傾向にあります。

そのため、特定市街化区域農地は負担調整措置が適用されない代わりに、軽減率が4年間適用されます。

しかし、「軽減率」は新たに特定市街化区域農地になった農地に適用される点に注意しましょう。

一般農地と生産緑地

一般農地と生産緑地は農地評価を用いて以下の計算方法で、固定資産税が算出されます。

  • 本則税額=評価額(農地評価)×税率(4%)
  • 調整税額=前年度の課税標準額(農地評価)×負担調整率×税率(4%)

本則税額と調整税額で固定資産税を算出し、金額が少ない方を固定資産税として納めなければいけません。

一般市街化区域農地

一般市街化区域農地は、宅地並評価を用いて以下の計算方法で算出されます。

  • 本則税額=評価額(宅地並評価)×1/3×税率(4%)
  • 調整税額=前年度の課税標準額(宅地並評価)×負担調整率×税率(4%)

本則税額と調整税額で固定資産税を算出し、金額が少ない方を固定資産税として納めなければいけません。

なお一般市街化区域の農地は宅地並評価を用いて算出されますが、農業を営んでいるならば負担調整措置が適用されます。したがって、厳密には「農地に準ずる課税」とされています。

特定市街化区域農地

特定市街化区域農地の固定資産税は、負担水準が0.8を超えるかどうかによって計算方法が異なります。負担水準は以下で算出されます。

・負担水準=前年度課税標準額/(今年度価格×1/3)

負担水準が0.8未満

負担水準が0.8未満の場合は、以下の計算式で算出されます。

  • 本則税額=評価額×1/3×軽減率×税率(4%)
  • 調整税額=(前年度課税標準額+本年度評価額×1/3×5%)×税率(4%)

この場合も、金額が少ない方が納めなければならない固定資産税となります。

負担水準が0.8以上

負担水準が0.8以上の場合は、以下の計算式で算出されます。

  • 本則税額=評価額×1/3×軽減率×税率(4%)
  • 調整税額=前年度課税標準額×税率(4%)

この場合も、金額が少ない方が納めなければならない固定資産税となります。

農地の固定資産税評価額の調べ方

農地の固定資産税評価額は、土地の所有者に毎年送付される固定資産税の納付書(納税通知書)の「価格」の項目で確認できます。

納税通知書がない、またはすぐに固定資産税評価額を確認したい場合は、自身が所有している土地であれば役所で確認できます。

しかし、自身で所有していない土地は役所でも確認できないので、土地の所有者に問い合わせなければいけません。

他にも市町村役場の窓口で以下の書類を取得・閲覧すれば、固定資産税評価額を調べることができます。

  • 固定資産課税台帳
  • 固定資産評価証明書

固定資産課税台帳を閲覧するには、本人確認書類(運転免許証など)が必要なので忘れずに持参しましょう。

農地の固定資産税の優遇措置について

生産緑地法の改正で、従来の優遇措置は受けられなくなりました。

しかし、2018年4月の生産緑地法の改正で「特定生産緑地制度」を利用すれば、優遇措置を受けることができます。

ここでは生産緑地法の改正によって従来の優遇措置が受けられなくなった背景と、特定生産緑地制度について解説します。

生産緑地法の改正で従来の優遇措置がなくなった

2022年には生産緑地法の改正によって、「生産緑地」であっても優遇措置が受けられなくなりました。これは「生産緑地の2022年問題」として多くの方に知られています。

そもそも優遇措置ができた背景には、農業を続けたい方や始めたい方が多く存在し、市街地に一定の緑地を保全することがありました。

その結果、1991年3月に生産緑地法が改正され、市街化区域内であっても生産緑地に指定されれば最低30年間の農地・緑地維持を条件に税金の優遇措置を受けられるようになりました。

しかし2022年に生産緑地の税制上の優遇措置がなくなり、固定資産税や相続税の支払いに心配を覚える方も多いでしょう。ただ特定生産緑地制度を利用すれば、別の優遇措置を受けられます。

特定生産緑地制度を利用すれば優遇措置を受けられる

従来の生産緑地の優遇措置はなくなりましたが、2018年4月の生産緑地法の改正により「特別生産緑地制度」が導入されました。

特定生産緑地制度では三大都市圏の生産緑地において、指定後30年までまたは特定生産緑地に指定されれば相続税の納税猶予が適用され、終身営農で免除となります。

評価方法も農地評価が適用されるため、固定資産税は低くなります。また、市区町村に買取を申し出ることができる期間が10年延長されます。しかし、特定生産緑地制度は10年ごとに更新が必要なので注意しましょう。

特定生産緑地制度については、国土交通省の「特定生産緑地制度の手引き」で詳しく解説されています。

農地の固定資産税が上がるケース

農地は基本的に農地評価によって評価されるため、固定資産税は宅地並評価に比べて安くなります。

しかし、農地の固定資産税が上がるケースがあるので確認して対策しましょう。

  • 農地を転用する場合
  • 特定生産緑地制度の優遇措置から外れる場合

農地を転用する場合

農地をそのまま利用するのではなく、宅地などに転用して活用する場合は、固定資産税が上がってしまいます。

というのも、評価方法が農地評価ではなく宅地並評価に変わるからです。たとえば、以下の具体例について考えてみましょう。

  • 土地の面積:1,000平方メートル(約300坪)
  • 農地評価額:1平方メートルあたり10,000円
  • 宅地並評価額:1平方メートルあたり50,000円
  • 固定資産税率:1.4%

この場合、固定資産税は次の通りです。

  • 農地評価に基づく固定資産税:140,000円
  • 宅地並評価に基づく固定資産税:700,000円

このように、農地評価から宅地並評価になると一気に固定資産税が跳ね上がってしまうので、農地を転用する場合は注意しましょう。

特定生産緑地制度の優遇措置から外れる場合

もう1つ農地の固定資産税が上がるケースは、特定生産緑地制度の優遇措置から外れる場合です。

特定生産緑地制度の指定から外れると、農地評価ではなく宅地並評価になるため、固定資産税が上がってしまいます。固定資産税額が数千円から数十万円になり、数十倍から百倍ほど上がるケースも存在します。

特定生産緑地制度は、10年ごとの更新制なので申請を忘れてしまうと指定から外れてしまいます。加えて、指定を受けて30年経過するとそれ以降は特定生産緑地の指定を受けられません。

激変緩和措置の対象となるのでいきなり固定資産税が急激に上がることはありませんが、優遇措置は受けられなくなります。また、生産緑地の指定を解除しても宅地並評価になるため注意が必要です。

農地の固定資産税が免除・減免されるケース

ここからは、負担をできるだけ軽くできるような、固定資産税の免税・減免されるケースについて解説します。

  • 課税標準の土地合計額や農地での収入がない場合
  • 不服があり審査見直し要求で減額される場合
  • 災害に被災したり生活保護を受けている場合

課税標準の土地合計額や農地での収入がない場合

所有している課税標準の土地合計額が30万円未満の場合は、固定資産税が免除になります。

しかし、土地に家屋などが建っている場合は、家屋分の固定資産税を支払う必要があるので注意しましょう。

加えて、農地から生み出される収入がほとんどない場合も固定資産税免除の対象となるケースがあります。なぜなら、そもそも固定資産税はサービスによって収益を得ている前提で課される税金だからです。

「収入がほとんどない」という基準は、各地方自治体によって定められています。

不服があり審査見直し要求で減額される場合

固定資産税や農地評価額に不服があれば、審査見直し要求によって減額される可能性があります。

審査見直し要求は、納税通知書の交付後3ヶ月と期間が決まっているので、早めに対応しましょう。

また、審査見直し要求を申し出ることができるのは納税義務者のみです。申請の方法は、各市区町村の公式ページにて公開されています。

災害に被災したり生活保護を受けている場合

災害に被災したり、生活保護を受けている場合は農地の固定資産税が免除・減免される場合があります。

免除・減免の基準については、各市区町村によって変わるのでお住まいの地域の公式ページを確認してみましょう。

たとえば熊本県天草市では災害時の減免・免除は、以下の条件が記載されています。

【土地】…災害を原因とする流失、水没、埋没、崩壊などにより作付不能または使用不能となった面積が全体の2割以上であるとき。 

【家屋・償却資産】…災害を原因とする全壊、流失、埋没、焼失などにより、原型をとどめないとき、または復旧不能、およびそれに準ずる損傷により2割以上の価格の価値を減じたとき。

https://www.city.amakusa.kumamoto.jp/kiji0032247/index.html

お住まいの「市区町村名 固定資産税 災害」と調べると、情報が出てくるので確認してみてください。

農地の固定資産税についてよくある疑問

農地の固定資産税について、よくある疑問について解説します。

  • 農地の固定資産税は経費にできる?
  • 農地の固定資産税は非農地に比べてなぜ安い?

農地の固定資産税は経費にできる?

農地の固定資産税は経費として計上することができ、土地の購入で借入をした場合、返済にかかる利子も経費として計上できます。

しかし、農地は資産になるので購入費用自体を経費として計上することはできません。減価償却もできないので注意しましょう。

農地の固定資産税は非農地に比べてなぜ安い?

農地は非農地と比べて固定資産税が安い傾向にあります。

農地の固定資産税が安い理由は、農地評価という宅地とは違う評価方法を用いるためです。

農地はそもそも土地としての利用範囲に限りがあるため、農地評価で算出される固定資産税評価額が低くなる仕組みになっています。

一方で宅地は土地の利用範囲が広いため、宅地並評価を用いて土地を評価するため固定資産税が高くなります。

したがって、「何にでも利用できる宅地と比べて、利用範囲が限られている農地は税金が安い」というのが農地の固定資産税が安い理由です。

まとめ

農地は農地区分によって決められている評価方法で、固定資産税評価額が決定され、納税する固定資産税が決められています。

一般農地や生産農地は利用範囲が限られているため、宅地よりも固定資産税評価額が低くなる「農地評価」によって決まります。

農地の固定資産税は安くなる傾向にありますが、毎年の管理費と合わせると所有しているだけで経済的な負担になります。

そのため、農地を所有しているものの活用方法を見出せず、所有しているだけになるのであれば、早めに売却した方が良いでしょう。

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