はじめて - 購入・所有の注意点と税金 2024.03.20

【要注意】マンションを共有名義で購入するメリット・デメリットとは

高額なローンを組むことができ、各種節税もできる「共有名義でのマンション購入」は、一見メリットが多いように見えます。

しかし相続や離婚時にトラブルが発生するケースは多く、その問題を子供にまで持ち越してしまうなどデメリットも多くあるのが実情です。

そのため共有名義で購入する際は、デメリットも含め全体像を理解しておくことが大切です。このページでは覚えておくべきポイントを、わかりやすくお伝えしていきます。

そもそもマンションの共有名義とは?

そもそも共有名義とは「1つの不動産に対して、複数人の所有者で登記を行うこと」を意味します。

たとえば夫婦など複数人でお金を出して不動産を購入する際や、2人以上の複数人で相続する際に「共有名義」となることがあります。

マンション購入は「単独名義」か「共有名義」

マンション購入は基本的に「単独名義」か「共有名義」での購入となり、夫婦のケースを例に紹介します。

  • 単独名義の場合:夫(もしくは妻)が頭金およびローンを組む
  • 共有名義の場合:夫と妻で頭金およびローンを組む/妻が頭金を出し、夫がローンを組む

共有名義の場合、出資した金額によって持分を決めます。

たとえば3,000万のマンションを購入するとして、夫が2,000万・妻が1,000万の出資の場合。

  • 「夫:妻=2:1」

上記の比率で共有持分を決めます。

共有持分の比率によって、家を売却した際に、それぞれの持分によって売却時が分けられますので、適当に決めてはいけない数字です。

ちなみに、単独名義で登記しているのに妻が頭金を出している...などの場合は「妻から夫への贈与税」が発生するケースがあります。

そういった事を避けるために共有名義を利用する方が多いですが、「とりあえず共有名義、はトラブルの元」になり、そのメリット・デメリットをおさえておきましょう。

マンションを共有名義で購入するメリット

マンションを共有名義で購入するメリットは、以下になります。

高額なローンでも組める

ペアローンなどを利用する事で、夫婦の収入を合算してローンの申請を出すことができます。結果としてより高額なローンも組め、高額な物件の購入が可能です。

子供部屋を確保したい...などの考えがあっても、単独での収入では希望の物件でローン審査に通らないこともあるでしょう。

その場合、共有名義にすることで夫婦合算の収入で審査をすることになり、ローン審査が通りやすくなるというメリットがあります。

住宅ローン控除を人数分受けられる

共有名義にすることで、住宅ローン控除を人数分受けることが可能です。

住宅ローン控除:所得税等が控除される制度

出典:国土交通省「住宅ローン減税

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して物件を購入した場合に「年末時点での住宅ローンの残高の0.7%」が、入居時から最長13年間にわたって給与などから納めた所得税や住民税から控除される制度のこと。

「住宅ローン減税」とも言われますが、正式には「住宅借入金特別控除」です。

この住宅ローン控除で、単独名義の場合は年間で最大35万円の控除ですが、2人での共有名義だと年間で最大70万円の控除となります。

注意点として、それぞれが控除を受けるには共有名義人の両者で住宅ローンを組むか、もしくは連帯債務者になっておく必要があります。

相続税・贈与税対策につながる

相続税や贈与税などの、節税対策も期待できます。

相続税対策となるケース

たとえば夫が亡くなり妻に不動産が相続される場合、単独名義だと相続税の対象は不動産の評価額すべてになります。

しかし共有名義の場合、相続税の対象となるのは夫の持分のみであり、仮に持分割合「夫:妻=1:1」の場合は不動産の評価額の半分のみが課税対象となる形です。

贈与税対策となるケース

たとえば3,500万のマンションを購入する際、親から1,500万の資金援助を単にしてもらうと「贈与」とみなされ、贈与税が発生する可能性があります。

しかし親と共有名義にすることで「贈与」とはみなされず、贈与税は発生しません。そのため資金援助をしてもらう際は共有名義にすることで税金面にメリットがあります。

マンションを共有名義で購入するデメリット

ここからは、マンションを共有名義で購入するデメリットを紹介します。

自由に売却・管理ができない

共有名義の物件を売却するには、共有者全員の合意が必要です。

そのため共有持分の割合が、仮に夫婦で「夫:妻=9:1」であっても、妻が反対すれば売却は不可能となります。

※民法251条より

他にもマンションを貸し出したり修繕するには「過半数の同意」が必要であり、相続などで3人以上の共有名義人が発生した場合、2人が反対すると何も物事を進められない事態となるのです。

※民法252条より

このように物件を売却や管理をおこなう際に、共有者同士で意見の食い違いがあるとトラブルになるケースが多くあります。

関連民法

251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

252条
共有物の管理に関する事項(次条第1項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。) は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

離婚時にトラブルの種となる

共有名義で物件を購入したあと、離婚してしまった場合はトラブルの発生が高まります。

たとえば離婚の際「財産分与」により財産は折半される仕組みですが、下記のような意見より協議が整わないケースは多いでしょう。

  • 子供を育てるため、自分は家に住み続けたい
  • 資金は自分がほとんど用意したのに折半は納得できない

特に残ったローン返済などについても意見が対立することが多く、離婚協議が長引いてしまう要因にもなりえます。

補足:財産分与とは

離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度です。

財産分与は,(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配,(2)離婚後の生活保障,(3)離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質があると解されており,特に(1)が基本であると考えられています。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00018.html

相続等で複雑な関係が発生する

マンションを含め共有名義の物件では、相続により共有名義者が倍々ゲームのように増える可能性があります。

これは共有者が亡くなるたびに、その子供に共有持分が分配されていくためです。

夫婦ならまだしも、顔も知らない人が共有者であると物件の売却などの話は非常に進みづらくなり、売却までの過程で裁判所が介入することも考えられるでしょう。

そのため共有名義の物件を相続などで子供に引き継ぎしていくと、子供たちがのちにトラブルの種を残してしまうことになります。

マンションは単独名義での購入がおすすめ

あらためて、メリットとデメリットを確認しましょう。

共有名義でマンションを購入するメリット

  • 高額なローンでも組める
  • 住宅ローン控除を人数分受けられる
  • 相続税・贈与税対策につながる

共有名義でマンションを購入するデメリット

  • 自由に売却・管理ができない
  • 離婚時にトラブルの種となる
  • 相続等で複雑な関係が発生する

税金面などでメリットがありそうに見える共有名義ですが、離婚時や子供にトラブルの種を渡してしまう...といったデメリットを考えると、単独名義での購入がおすすめでしょう。

共有名義に関するトラブル例は毎年多く発生しており、それはたとえ親族間であっても裁判に発展してしまうケースがあります。

単独名義で購入するために

  • ローン可能な範囲でマンションを探す
  • 共有名義にせず親から資金援助してもらう

親からの資金援助により住宅を購入する場合、最大1,000万まで非課税となります。そのため共有名義にしなくとも贈与税対策をしつつ単独名義で購入する手段は残されています。

参考:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

マンションを共有名義で購入した場合のよくある疑問

ここからは、マンションを共有名義で購入した場合によくある疑問をQ&A形式でまとめます。

離婚した場合の共有名義のマンションの対処方法

離婚した場合は「財産分与」に基づき、下記2つの方法を利用することが一般的です。

  • 不動産を残し、どちらかが買い取る
  • 不動産を売却して、利益を折半する

1つ目の方法では、たとえば3,000万の家を夫が引き取る場合、1,500万を妻に支払い買い取る形になります。

2つ目の方法は家を売却して、発生した利益を2人で折半する形です。

なお、共有名義のままで離婚して、どちらか一方が死亡した際に、対象物件に相続が発生し、さらに複雑な事態になることが予想されます。

そのため、共有名義はなるべく早く解消した方が良いでしょう。

マンションを親子での共有名義で購入するのはおすすめ?

購入できる物件の幅は広がりますが、ひとえにおすすめとは言えません。

たとえば親もローン支払いをする場合、定年退職によって支払いが厳しくなることが考えられます。また子供がそのローンを肩代わりしても「贈与」とみなされる場合があり、税金が発生する可能性もあります。

また転居をすることになった場合、家のローンと転居先の支払いも発生し、そこで親子でローンの支払いについて意見が違ってしまうケースも考えられるでしょう。

そういった背景から、親子での共有名義で購入するのは慎重になることをおすすめします。

共有名義のマンションの相続税や固定資産税について

それぞれの税金が発生するタイミングや、条件についてまとめます。

相続税

発生するタイミング:親や夫などから相続された時

発生する税金について:相続された持分割合によって決まります。たとえば夫がなくなり、共有持分の割合が「1:1」なら物件評価額の50%分が相続対象であり、その分が課税対象となる形です。

固定資産税

発生するタイミング:共有名義の物件を保持している時

発生する税金について:固定資産税は、共有持分の割合に関係なく共有者全員が納める義務があります。なお1人が納めた場合は残りの共有者は納める必要はありません。そのため代表者を決めておく必要があり、持分割合が多い人や不動産に居住している人が代表者になることが一般的です。

まとめ

共有名義のマンションは、相続や離婚時などにトラブルになるケースが多いと言えます。

そのため単独名義での購入を行ったりなど、子供にトラブルの種を残さないために共有名義を解消しておくことも視野に入れておくべきでしょう。

弊社は、共有名義物件の売却などがスムーズに行われるようお手伝いしておりますので、共有名義関連でお困りの方はぜひお気軽にご連絡してください。

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