もっと知りたい - 放棄する方法はあるの 2024.10.31

共有持分の放棄は早い者勝ち?やり方や必要書類・費用感も紹介

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共有持分を保有している背景から面倒なトラブルなどに巻き込まれる、もしくは巻き込まれそうなため放棄を考える方は多いでしょう。

しかし単純に放棄を選択しても実は面倒な処理が多いなど、一概に共有持分の放棄は良い選択だとは言えません。

この記事ではそもそも共有持分の放棄の定義や実際のやり方、手続きを始める前に知っておくべき注意点を紹介します。

そもそも共有持分の放棄とは

そもそも共有持分の放棄については、以下のように明文化されています。

第255条

共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC255%E6%9D%A1

放棄するとどうなる?

第255条にあるように、共有持分を放棄するとほかの共有者に自身の持分が配分されます。ここは具体例でくわしく見てみましょう。

事例①

  • AさんとBさん2人が1/2ずつ保有
  • Aさんが放棄した場合
  • Aさん:1/2
  • Bさん:1/2

↓ 放棄後

  • Aさん:0
  • Bさん:1/1(単独名義)

解説

Aさんの持分1/2がBさんに配分された。

事例②

  • AさんとBさんとCさんの3人が1/3ずつ保有
  • Aさんが放棄した場合
  • Aさん:1/3
  • Bさん:1/3
  • Cさん:1/3

↓ 放棄後

  • Aさん:0
  • Bさん:1/2
  • Cさん:1/2

解説

Aさんの持分1/3がBさんとCさんにそれぞれ半分(1/6)ずつ配分された。

  • 1/3+1/6=1/2

事例③

  • Aさんが1/2、Bさんが1/3、Cさんが1/6の割合で保有
  • Aさんが放棄した場合
  • Aさん:1/2
  • Bさん:1/3
  • Cさん:1/6

↓ 放棄後

  • Aさん:0
  • Bさん:2/3
  • Cさん:1/3

解説

配分される共有者の保有割合が違う場合、保有割合によって変わる。

Bさん:Cさん=2:1のため、Aさんの1/2を2:1で受け取る

上記のような形で放棄後は分配されます。

結論として、共有持分の放棄は本人の意思でいつでも実行可能です。ただし持分移転登記を行わないと第三者には証明できません。そして登記には共有者の協力が必要なため、話し合いを最低1回は行う必要が出てきます。

この辺りの注意点に関しては記事後半でお伝えします。

なお補足ですが、農地又は採草放牧地の所有権を移転する場合には、農業委員会または知事の許可を受けなければならないとありますが、放棄の場合は法律の規定に基づく移転であるため許可は不要です。

農地関連での放棄を考えている方は、覚えておくことをおすすめします。

共有持分の放棄が早い者勝ちと言われる理由

共有持分の放棄では「早い者勝ち」と言われる背景がありますが、この理由も紹介します。知っておくと得する知識です。

最後の1人は放棄できない

共有持分の放棄では「早い者勝ち」という理由は、最後の1人は持分放棄が行えないからです。

そもそも最後の1人は不動産を単独名義で保有している状態であり、放棄という概念がありません。

なお持分放棄が行われる理由として、共有状態から抜けられることはもちろん、固定資産税の負担から逃れられるといったメリットがあるためです。

こういった背景から「共有持分の放棄は早い者勝ち」と言われております。

ただ持分放棄は「放棄」のため、売却益を得ることなどはできません。実は共有持分のみを売却することも可能なので、明らかに利用する計画がない不動産でないのであれば、売却も1つの視野に入れて良いでしょう。

持分放棄は他の共有者に登記関係で協力してもらう必要もあるため、その辺りに煩わしさを感じているのであれば、第三者への売却の方がおすすめと言えるでしょう。

なお弊社は共有持分の売却を専門としております。無料相談も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

»お問い合わせはこちら

持分放棄のやり方・手続き

ここからは、持分放棄のやり方・手続きについて紹介します。基本的な手順は下記の2つです。

持分放棄の意思表示を行う

まずは持分放棄を行う旨を共有者に伝えましょう。

その後、意思表示した旨を公的に証明するためにも、内容証明郵便を出します。

なお注意点として、持分放棄は本人の意思だけでできるとはいえ、きちんと共有者に口頭などで伝えてから内容証明郵便を出すようにしましょう。

というのも放棄後の登記申請などで共有者に協力してもらう必要があり、相手に不快感を与えてしまうような行動を避けるためです。

共有持分移転登記を申請する

ほかの共有者に意思表示をしたのち、共有持分の移転登記を完了させる事で正式に放棄できたことになります。

なお共有持分移転登記とは、共有持分の保有者(所有権)が移ったことを示す登記であり、この登記申請に共有者の協力が必要となります。

基本的には下記の流れで登記申請が完了します。

  • 登記申請書を作成
  • 必要書類を法務局へ提出
  • 登記完了証・登記識別情報の交付

必要書類について

必要書類は、基本的に下記です。

  • 登記申請書
  • 登記識別情報
  • 登記原因証明情報
  • 固定資産評価証明書
  • 登記権利者の住民票
  • 登記義務者の印鑑証明

申請書については法務局のHPで公開されてますので、そちらからダウンロードが可能です。

なお持分が配分される側(取得する側)の人は、住民票と本人確認資料、認印が必要となります。

共有持分の放棄にかかる費用

ここからは共有持分の放棄にかかる費用感を紹介します。主に下記3つの観点で費用が発生します。

登記費用

登記費用には下記2つが含まれます。

  • 登録免許税
  • 司法書士への依頼代

登録免許税は、下記の計算式で求められます。

  • 登録免許税額=固定資産税評価額×2%×持分割合

例:固定資産税評価額3,000万、持分割合が1/2だった場合

  • 3,000万×0.02(2%)×1/2(持分割合)=30万

また登記を司法書士に依頼する場合は、3万〜5万ほどの依頼代も追加されます。

なおこれらの費用を、誰が払うかは決まっておりません。とはいえ一般的には放棄する側が負担することが多い形です。

固定資産税

共有持分を放棄しても、固定資産税は納める必要があります。というのも、固定資産税の課税は1月1日時点の不動産所有者が対象になるためです。

共有持分を放棄した人は、税額を日割りで計算し持分を所有していた分のみを負担します。

贈与税・不動産取得税【取得者側】

持分放棄において、取得者側にも費用(税金)は発生します。それが贈与税と不動産取得税です。

持分放棄とはいえ、取得者は「贈与された」とみなされますので贈与税と不動産取得税が発生する形です。

なお贈与税は下記のように決定されます。

贈与額(基礎控除後)税率控除額
200万円以下10%なし
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円
引用:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

あくまで共有者は不動産を取得できていますので、資産は増えております。そのため税金を支払う必要があり、不動産の価値によっては100万単位の支払いが発生するケースもあるでしょう。

このように持分放棄は単なる手続きに留まらず、費用面で対応しなければいけない場合が多いので必ず話し合いはしっかりと行うべきです。

とはいえ共有者と話し合いがむずかしい、面倒ごとはあまりしたくないと思う方には持分売却がおすすめです。記事後半でも詳しくお伝えしますが、放棄以外の手段があることも知っておきましょう。

共有持分を放棄する際の注意点

最後に、共有持分を放棄する際の注意するポイントを3つあらためて紹介します。

放棄後の登記が必要

先ほども紹介しましたが、放棄後は登記が必要です。

登記申請が完了しないと固定資産税の支払いなどが必要になる可能性もあり、公的に放棄できたことを証明できません。

そのため、登記申請処理は必須であると認識しておくべきです。

登記手続きは共有者と行う

登記手続きには共有者の協力も必要で、自身のみでは基本的にはできません。

そのため放棄することを決めて、自動的に共有関係から抜けることは基本的には不可能だと考えておいた方が良いでしょう。

共有者に放棄する旨と放棄したことで共有者たちの状態や費用などを説明して、協力してもらう体制を整える必要があります。

登記引取請求訴訟が必要な場合もある

放棄の旨を伝えた後に、協力してくれない場合も考えられるでしょう。

その場合にどうしても放棄をしたいなら「登記引取請求訴訟」によって自身のみで放棄に関する手続きを進めることもできます。

登記引取請求訴訟とは

共有者が登記申請に協力してくれない場合、持分放棄をした人が「登記申請を実行する権利がある」と裁判所に主張する訴訟。

共有持分を放棄するなら売却もおすすめ

共有持分の放棄は、共有者と関係が良好でないと話し合いが進まないケースが往々にして考えられます。

そういった部分で放棄がむずかしそうと考えるなら、売却を検討することもおすすめします。

共有持分のみの売却も可能であり、金銭面を獲得できるメリットもあります。もちろん共有持分の売却のみなら共有者の同意は不要です。

そもそも売却を考えていなかった方は、ぜひ視野に入れる事をおすすめします。意外にも高額で売却が決定する場合もありますので。

なお弊社は共有持分の取り扱いを熟知しております。また税理士や弁護士とも連携して、ご依頼主様の希望に沿った

現状の状態等の相談は常に承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

共有持分を放棄するなら、共有者の協力が必要なため話し合いを含めたコミュニケーションを適切に取ることが重要です。

ただ状況によっては協力してくれない場合もありますので、その場合は共有持分の売却といった手段の検討もおすすめです。

登記引取請求訴訟を使った放棄のやり方もありますが、それぞれの手段のメリットデメリットを整理して、自身に合った手段で進めてみましょう。